対米協調派末裔の麻生太郎はなぜオークラの常客なのか 米国大使館と繋がるホテル 12/19一部差替 

2018年1月。民主党政権の鳩山由紀夫元首相側近として金融財政政策を支えた元衆議院議員と面談した。ホテルオークラに隣接する米国大使館の方向を指し「あれが日本の司令塔」と語り、さらに「日本政府の主要人事は駐日アメリカ大使の采配で決まる」と明言した。これは永田町では常識であろうが、だれも口にしない。否、タブーとなっている。12月11日掲載記事「岸田首相、安倍派一掃と岸田降ろし封じを米と協議か 麻生と面談後米大使館隣接のホテルへ  | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」などで今回の安倍派解体劇のキーパーソンは麻生太郎・自民党副総裁であり、その背後には米権力中枢が存在すると主張。ホテルオークラは西園寺公望、牧野伸顕、吉田茂ら戦前戦中の対米協調派の末裔麻生と米支配層を結ぶ回廊とみた。それを裏付けるかのように麻生が政治資金収支報告書に記載したオークラへの支出額は政界では断トツだった。

朝日新聞が「現職の閣僚や党首はどんな店に通うのか」をテーマに2014年と15年分から独自に集計した政治資金収支報告書の支出額(16年11月25日までの公開分のみ)をみると、麻生は閣僚や党首がこの間最も利用したホテルオークラに35回通い支払額は約390万円だった。この時期は安倍内閣が2014年に集団的自衛権行使を閣議決定で容認し、2015年に自衛隊を世界規模で米軍の司令下に置く新安全保障法制が施行された。これは対日司令塔・米戦略国際問題研究所(CSIS)の勧告書である2012年アーミテージレポートに100%従ったものだ。

第二次安倍政権の副総理だった麻生は、CSISと深く結ばれており、この時期リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイといった対日勧告書の筆頭執筆者やマイケル・グリーン、カート・キャンベルといったジャパンハンドラー、第二次政権で復活するまで安倍晋三の教育係を務めたと言われたルイス・リビーをはじめ米ネオコンと頻繁に東京で会っていたとみられる。麻生のオークラの利用具合ー回数で全体の約4分の1、金額で約3分の1-がそれを示唆している。麻生は首相時代(2008-2009)に帰途ホテルのバーに足繁く通い話題となった。最も頻繁に利用したのがホテルオークラ東京だった。

 

主要政治家が頻繁に利用するホテルの第二位はザ・キャピトルホテル東急である。首相官邸の北西側至近距離に位置するこの高級ホテルは当時の安倍晋三首相が地の利を生かして頻繁に利用し、全体の3割近い103万円を支出、これも断トツ1位となっている。このホテルは菅義偉が首相在任中(2020-2021)、毎朝、有識者や著名人を招き、懇談しながらパンケーキで朝食をとったことで有名となった。安倍、菅、岸田はともに政治資金収支報告書のオークラへの支出額リストに名前がない。上記掲載記事では、メディアは12月10日に岸田首相はホテルオークラで秘書官とミーティングを行い、安倍派幹部の萩生田政調会長と面談したと報じた、と書いた。多忙な総理が官邸、公邸、または至近距離のホテルを使わず、わざわざ地の利のない米国大使館に隣接するホテルオークラを利用する必要はないはず。あえて出かけたのは、一部報道にあったように、麻生太郎と落ち合ったためであろう。

ホテルオークラは、「アメリカ様のためのホテル」である。それはホテル開業の経緯を知れば納得できる。ホテルオークラは、大倉財閥の二代目大倉喜七郎が1958年に設立した。大倉は公職追放により帝国ホテル会長の地位を追われ華族としての待遇も奪われた。しかし、ホテルオークラは、国内屈指の工芸家たちの協力を得て、「日本の美を以って諸外国の貴賓を迎えるホテル開業に熱意を燃やし、『帝国ホテルを超えるホテル』をコンセプトに設立された」ホテルとされる。とはいえ、米国大使館と道一本隔てて隣接していた大倉家私邸が立ち退き、その跡にオークラが建てられたのは、米政府の東京迎賓館としての役割を果たすホテルの建設を強要されたことを示唆している。2014年に訪日したオバマ大統領(当時)は赤坂・迎賓館への宿泊を断り、オークラに滞在した。

12月10日に岸田首相はホテルオークラのスイートルームに萩生田を呼んだとの報道もあった。オークラのHPによると、会談のできそうな「ヘリテージスイート ツインベッド 120平米」が4室ある。ここにオバマ一行も投宿したようで、来日した米政府高官は押しなべてこの最高級スイートに宿泊しているものと思われる。もし萩生田がスイートルームに招かれたのなら、米大使やワシントンから出向いた高官を含む米政府関係者が岸田、麻生とともにそこで会合を持ったとみるのが自然ではないか。あくまで推測の域を出ないが、米政府高官は人目を避けフリーハンドでオークラに出入りしていると思われる。

因みに、ホテルオークラでは2017年4月18日、天皇(当時皇太子)夫妻が出席しジャパン・ソサエティー創立110周年の記念レセプションが開催されている。同ソサエティは1907年にジョン・ロックフェラー1世によりニューヨークに創設され、以降ロックフェラーが多額の寄付をしてきた。会合には麻生家の面々も姿を見せたはず。チェースマンハッタン銀行CEOを長く務め、米金融界・ウォール街のトップ外交官と称されたディビット・ロックフェラー(ジョン3世の末弟、1915年 - 2017年)こそジャパンハンドラー、ネオコンの総元締めであり、米権力の中枢である外交問題評議会(CFR)名誉会長であった。ディビットは勲一等瑞宝章を受勲するなど天皇家をはじめ日本の政財界との関係がことのほか深かった。実妹が三笠宮家に嫁いだ麻生太郎はロックフェラー家との抜き差しならぬ関係にあり、それが圧倒的な麻生の力の源泉となっているとみられる。

【写真】ホテルオークラで開催されたジャパン・ソサエティー創立110周年の記念レセプション。挨拶しているのはジョン・ロックフェラー4世の息子でジャスティン・ロックフェラー。

 

2022年12月掲載の論考「米国の日本支配に背を向け敗戦否認する政治報道 報道の自由放棄し戦後史歪曲 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」で、「日本政府の主要人事は駐日アメリカ大使の采配で決まっているのに、それを決して字にしないとの不文律が出来上がっている。それは敗戦の否認であり、報道の自由を放棄し戦後史を歪めてきた。」と書いた。今回の安倍派潰しのための政治資金パーティー裏金疑惑報道でも米国関係者の動向は一切報じられない。内閣支持率、自民党の支持率が危機的水準にまで落ちているのに「岸田降ろし」の風は吹いていない。そこにワシントンが介入していることは疑いの余地がない。天木直人氏は自身のブログに「米国が支持する限り岸田政権は続く」と予測している。「反骨の元外交官」ならではのまっとうな見解である。日本の政治報道は米国の日本政治への干渉と日本の対米隷属をないことにしたいウルトラ排外主義に陥っている。