ロシア軍の侵攻によるウクライナ危機が日本の親米右翼と欧州のネオナチを結び付けている。ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアの軍事侵攻を受け2月末に外国人志願者部隊を編成すると発表。日本では在日ウクライナ大使館が自衛隊などでの経験を条件に志願兵を募るとすぐさま約70人が応募したと伝えられた。海外メディアの報道によると、米国などでゼレンスキー大統領の呼びかけに応じてウクライナ軍への個人参加を希望する動きが出ている。数日後開かれた自民党の外交調査部会(衛藤征士郎会長)では日本からも参加希望者がいることを認める発言が出た。米国のネオコン筋が日本とウクライナの極右組織を結び付けているためではないかと疑われる。
日本の外務省は表向き「ウクライナ全土に退避勧告を発しており、目的を問わず同国への渡航をやめて頂きたい」としている。だが、自民党外交調査部会などは米ネオコンと一体の日本会議人脈に牛耳られており、直接参加はないとしても自衛隊人脈も絡む日本の右翼グループが反ロシアキャンペーン急進派の中核となっているのは確か。
外交調査部会長の衛藤征士郎元防衛庁長官(衆議院議員)は九条破棄を柱とする改憲運動の中核を担い、自民党憲法改正推進本部長も務めた安倍派の重鎮。同じ大分選出の衛藤晟一参院議員らとともに極右民族主義者団体で第一次安倍政権を支えた1997年の日本会議結成の中心人物の一人。米ネオコン人脈と深いつながりがあるとみられている。(注)
注:3月24日掲載記事「敵視されるドイツ 日本はアメリカ幕府の外様 ウクライナ危機と米、独、日」、3月21日掲載記事「ウクライナ・ネオナチや日本会議操る米ネオコン 覇権維持に手段選ばず」などを参照されたい。
ネオリベ(新自由主義)による世界規模での経済グローバル化が破綻したことは2008年リーマンショック・金融恐慌が象徴した。先進国の若者たちの多くが失業と低賃金に苦しんでいる。ネオナチは先進国の若者の社会への不満を吸収する受け皿となった。戦争屋と言われる軍産複合体や巨大金融資本を支える米政治勢力ネオコンは戦争のビジネスモデルを大きく変えた。彼らは従来の国民志願制から民間傭兵サービス企業の利用拡大へと動いたからだ。
ネオナチ組織と民間傭兵企業が連携し、社会の閉塞感に苛立つ青年層や失業者をウクライナでネオナチ部隊=写真=に組織化して戦争ビジネスに活用している。この戦争ビジネスモデルは米国から日本、中東地域、欧州などへと広がりつつある。日本でも親米右翼が水面下で欧米のネオナチ集団と同様の組織をつくり、米国や中東を経由して長期化が予想されるウクライナ戦争に個人参戦することは大いにあり得る。
ウクライナ戦争でもっとも打撃を受けているのは原発運転を凍結したドイツだ。ウクライナ経由のパイプラインでロシアから天然ガスを輸入しており、制裁を受けたロシアは2024年に更新を迎える契約を打ち切り、ウクライナへの天然ガス供給の完全停止を決めた。ドイツ経済への打撃は計り知れない。欧州連合(EU)の盟主で発言権のあるドイツはウクライナでの早期停戦・和平の仲介に熱意を示し、米英主導の「プーチン・ロシアの悪魔化」には距離を置く。ロシアのプーチン体制転覆に向け戦争の長期化も辞さないワシントンとの水面下の交渉は激しさを増している模様。
ドイツでは東西ドイツ統一以降ネオナチの非合法活動が続き、ヒトラー信者やナチズム賛美者が蠢いている。ウクライナ戦争が長引けば長引くほど天然ガスの価格が高騰し、ドイツ経済は失速を続けかねない。経済の疲弊はドイツで活動するネオナチのさらなる台頭を許す。ショルツ新政権が恐れているのは何よりもこの負のスパイラルのはず。
一方米国では共和党に寄生するネオコンの正体が明るみに出ており、米国の若者を戦争に動員するのは難しくなっているという。そこで、日本を含む世界中に広がりつつあるネオナチシンパが着目されている。ゼレンスキー大統領の日本人志願兵リクルートに米ネオコンの影をはっきり読み取れる。
3月24日。ベルギー・ブリュッセルNATO本部。米政府の方針や言葉遣いをオーム返しするばかりの「アメリカ幕府の外様大名」日本の首相をドイツ政府首脳はどんな思いで見つめただろうか。(注)
(注)2022年3月25日掲載記事「ウクライナ危機討議したG7緊急首脳会合 写真が示す微妙な米独関係と日本の孤立 3月28日更新」を参照されたい。