米露首脳間にのぞく信頼醸成と相互理解…ウクライナ戦争巡る視点   

トランプ米大統領の就任を機にウクライナ戦争は停戦に向けて動き始めた。米ロの首脳間には信頼と相互理解が醸成されているようだ=写真。トランプは2022年2月24日にロシア軍が一方的にウクライナに侵攻した」とはみていない。2004年のオレンジ革命の流れを引き継ぐ2014年のマイダンクーデターで親ロシア派のヤヌコビッチ大統領が追放された後、ネオナチ部隊の混成するウクライナ軍はロシア系住民が圧倒する東部2州で民族浄化に近い虐殺を繰り広げたため、東部2州は独立を宣言して内戦状態に陥っていた。その独立をロシアは直ちに承認、ロシアと東部独立国で集団的自衛権を行使した。反露にとりつかれた欧州諸国を無視して米国はトランプ政権発足とともにこれを認めた。この視点がないと、トランプの言動は理解できない。

驚くべきことに日本のメディアを含め西側メディアは2004年から2014年への流れ、そしてオルガルヒ・コロモイスキーの傀儡から米英主導のネオナチ体制を率いたゼレンスキー大統領がロシア人住民が圧倒的な東部2州に高度な自治権を付与すると国連安全保障理事会で決議されたミンスク合意2を履行しなかったこと。バイデン米大統領は「米軍は派遣しない」と告げ、022年2月14日に起きたロシア軍の特別軍事作戦に誘い水したことを無視し続けている。独立を宣言した東部のドネツク、ルガンスクとともにウクライナ・NATOに対して集団的自衛権を行使したのがロシア軍のウクライナ「侵攻」であった。少なくともロシア側の主張によれば…。

ロシアとの和平対話に乗り出したトランプ米政権はこの「ロシア側主張」を完全に理解している。ヘグセス米国防長官は2014年のクリミア領有もソ連時代の特異な事情を踏まえてのもので「ウクライナに戻る可能性は少ない」と公然と示唆した。それはウクライナ戦争の背後にあるソ連時代の国境線引きなど様々な要因、中でも米英金融資本、軍産複合体のプーチン体制破壊・ユーラシア制覇というグローバリズムの野望が根底にあるとの認識による。

こんな中、日本のメディアは口をそろえて「ロシアのウクライナ領土侵攻という明確な国際法違反を許せば、東アジアで起きている(中国による)力による一方的な現状変更を認めることになる」と“批判”している。ならば対テロ戦争を口実とした米国のアフガン侵攻、イラク戦争はどうなのか。民間人の死者300万人ともいわれるイラク戦争は疑いの余地のない国際法違反であり、一方的な現状変更としてイラクの体制転換を実行した。このネオコン主導の米国の破壊と蛮行には口をつぐみ、「ロシアのウクライナ侵攻」を非難する西側メディアはもはや「真相を掘り起こす」ジャーナリズムの務めを放棄している。

ウクライナ戦争は2022年2月に始まったわけではない。

2014年マイダンクーデターは東部諸州のウクライナからの分離・独立運動を一気に加速させた。ウクライナ政府はアゾフ大隊をはじめネオナチ集団を武装させて東部諸州で蛮行を行い始めた。そこでドイツ、フランスが仲介して「ミンスク合意」が制定された。2015年のミンスク2は国連安保理で決議され、国際法の地位を獲得した。内戦の終結が取り決められたのである。ところが、メルケル前独首相が告白したように「ミンスク合意は(ロシアとの戦争準備のための)たんなる時間稼ぎにすぎなかった」。ウクライナ政府とその背後にいる米ネオコン政権はドネツク、ルガンスクそしてロシアを挑発しその堪忍袋の緒が切れるのを待ったのである。

ウクライナのヤヌコビッチ大統領が2013年11月21日、ウクライナのためにならないと判断してEUとの連携協定への署名を先送りした。すると2013年末から2014年2月にかけて、ウクライナ国内で大規模デモが起きた。米国の全米民主化基金NED)やジョージ・ソロスが巨額の資金を投下した周到な準備の下、ヤヌコビッチ政権転覆に向けて動き始めた。

ウクライナ戦争が本格化するとプーチン悪魔化、狂った独裁者のキャンペーンが一斉に起こり、トルコでの停戦交渉が進むとブチャで不可解な虐殺事件が起きた。すべてロシア軍の犯行とされた。これに全面加担したメディアは、トランプ主導のウクライナ和平をどう報道するのか。USAIDの裏側暴きを皮切りにディープステートの全貌が明るみに出る日も近い。それでもトランプは悪魔プーチン独裁政権とつるんだ陰謀論政権を率いているとでも言うのか。

中でも、真相を闇に葬った2014 年マレーシア航空機撃墜事件=「2023/02/11「すべてロシアの責任」ー漂う米英による謀略の腐臭 マレーシア機 撃墜最終報告書」を参照されたい=は特筆に値する。この事件はウクライナ戦争、プーチン悪魔化キャンペーンと密接関連しながらも今や忘れ去られてしまった。2001年9・11と並び数千、数百単位の無辜の命が瞬時に奪われたのだ。陰謀論云々ではなく、事件の背後を真摯に探ろうとする強い意思を棄てたメディアは体制側の卑しいプロパガンダ機関にすぎない。

西側メディアはトランプの掌中で破滅しつつある。

 

参考:

プーチン政権崩壊狙うブレジンスキー構想 ウクライナ危機と米のユーラシア制覇

マリウポリの小児病院爆撃を巡る疑問 西側情報を鵜呑みにするな

 

ウクライナ・ネオナチや日本会議操る米ネオコン 覇権拡大に手段選ばず