日本の対中観、根深い蔑視

以下は8月7日から12日までに最有力ポータルサイト日本語版に掲載された中国を巡る一部記事の見出しである。いずれも有力新聞社、雑誌の傘下にあるニュースサイトが記事を転載したものだ。とは言え、いずれも政権寄りの右派サイトである。

 

・米中 ”軍事衝突” 戦慄シナリオ! 南シナ海で偶発局地戦 中国が台湾侵攻、北朝鮮も南進 …第三次大戦だ

・ついに米国が中国に「宣戦布告」 日本の本格参戦前に米に突きつけたい3条件

・自由世界VS.共産中国、米中対立は一触即発の域に トランプ時代の地政学

・中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ

・仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方

・南シナ海で”米中衝突”の危険性 日本政府が今すぐやるべきことは?

・米国の総攻撃にも中国は「過激発言だけ」「反撃しないのか、できないのか?」

・習近平も焦りまくる いよいよ世界中で「中国アプリ」排除が始まった

 

「自由世界は同盟して共産主義の中国を変え、圧政に勝利しければならない」。7月24日にポンペイオ米国務長官は「中国の体制転換=中国共産党打倒」を誓った。一般には米中冷戦宣言と呼ばれている。これを機に沸騰した日本のメディアの反中報道には目を覆いたくなる。冷戦が今にも熱戦にエスカレートすると言わんばかりだ。

問題なのは来る日も来る日も中国脅威をシャワーのように浴びるとどうなるかである。特に、新聞雑誌離れした若年層の「ニュース源」はネットである。これを念頭に入れた「集中豪雨」型の反中キャンペーンであることは間違いない。

日本のメディアは米国のお先棒を担ぐ形でまたしても「大本営発表」を行っている。

ただ今回の「大本営」は実在しない。報道機関の記者(寄稿者)、編集関係者の内面にへばりついている「中国嫌悪と侮蔑」がそれだ。加えて政権への忖度と同調。「読まれる、売れる」。これが編集者らの心を蝕んでしまっている。

これから年末にかけ解散総選挙をにらみながら、中国の軍事脅威、尖閣侵攻、武漢ウィルス賠償請求キャンペーンが上記メディアで盛り上がることだろう。奏功すれば、与党圧勝となる。これに呑みこまれないメディアリテラシーが不可欠である。

「シナ」、「チャンコロ」との兵隊用語が象徴する中国蔑視は明治維新以来の日本の軍事膨張主義の産物である。しかし、古代大和朝廷時代にまでさかのぼると、朝鮮半島を巡る中国への対抗心を見いだせる。日本の統治者は一時期、自らを中国歴代王朝(大帝国)と対抗し、朝鮮を従属させ得る帝国と位置付けた。それが嫌悪と一体となった中国への対抗心の起源である。詳しくは稿を改める。

中国への嫌悪、蔑視を克服する歴史認識と理性が求められる。

 

:「日本の対中観」は本ブログの一大テーマである。

差し当たり、既投稿記事「「変らぬ日本」の続編について」

同「中国巡る、対決と従属的連携 日米関係100年史 」

を併読していただきたい。