安倍暗殺巡る疑惑に新たな影 特捜検察の安倍派解体図る国策捜査で

安倍晋三元首相が暗殺されたから検察は自民党清和会(安倍派)を解体へと導く政治資金パーティ「裏金」疑惑捜査に踏み切ったのではないのか。安倍派解体を狙ってまずは派閥領袖の安倍が消されたのではないか。これは誰もが思い浮かべる自然な疑問であるはずだ。だがメディアからこんな問いかけは一切聞こえてこない。検察作成の起訴状では安倍銃殺の態様をまったく説明できない。本ブログでも再三指摘したように矛盾だらけである。しかも、事件から1年半経っても起訴された山上徹也被告の初公判期日まったく見通しが立っていない。まるで臭いものには蓋とばかりに公判開始をできるだけ遅らせようとしている。「安倍を葬り、続いて安倍派を解体する」との謀略があったとの見方を前提にしたほうが、今回の「裏金」疑惑捜査と安倍派解体劇は理解しやすい。だがこのような安倍暗殺を巡る疑惑に新たな影を投げかける見方は永久にタブー視される。

今回の「裏金疑惑」事件は、NHKが11月18日、東京地検特捜部が自民党5派閥の担当者に任意の事情聴取を要請し、聴取を進めている」と報じ、一般に知られることとなった。続いて文春オンラインが11月29日、自民党安倍派の2021年及び2022年の政治資金パーティーの大口購入者のうち3割以上池田 佳隆衆議院議員支援企業であると報じて一気に報道は過熱した。だが、安倍殺害から4か月後、しんぶん赤旗は2022年11月に自民党5派閥が政治資金パーティー券を20万円超購入した大口購入者の名前を政治資金収支報告書に記載せず、長年にわたり脱法的隠蔽を行っていたと報じていた。これを受け神戸学院大学教授の上脇博之が独自に調査して刑事告発した。赤旗の報道から1年余り。文春砲とともに満を持したかのように東京地検特捜部はメディアに捜査着手したことを積極的にリークし始めた。

特捜検察の主たる任務は疑獄事件の摘発である。それは極めて政治性を帯びた国策捜査となる。12月13日に臨時国会が終了すると、安倍派の議員から”内部告発”が始まった。清和会(安倍派)が自民党主流に躍り出た森喜朗内閣(2000-2001)の時から「ノルマを超えたパーティ券売り上げのキックバックは始まっていた」との声が上がった。そして防衛副大臣を辞任した宮沢博行衆議院議員は「派閥のほうからしゃべるな、しゃべるな、これですよ」とあからさまに発言、「キックバックを記載しないことを口外しないよう、箝口令が敷かれていた」と暴露した。安倍の死去とともに強力なリーダーを失った約100人の安倍派議員の多くは、自分たちの将来に大きな不安を抱いていたはず。そこに安倍派裏金問題を以前から「引き出し」に収めていた特捜検察が動き出し、亀裂の入っていた最大派閥は一気に崩壊へと向かっている。この清和会(安倍派)崩壊こそ捜査の目的なのである。

本ブログは集団的自衛権行使容認に基づく2015年の新安全保障法制施行をもって安倍晋三及び安倍派の役割は終わったと解説してきた。これを前提にすれば、少なくとも安倍派解体のシナリオはそのころから練られてきたとみても大過ないと思われる。保守本流宏池会は往年の力を清和会に奪われ自民党第4派閥にまで凋落していた。岸田が総理・総裁となっても慣例を無視して派閥(宏池会)会長を続けたのも「宏池会出身の総理」であることを内外に示すためだったのではなかろうか。第二次安倍政権で副総理・財務大臣を務め続け「影の総裁」として君臨した麻生太郎は自分も片足を突っ込んでいる宏池会の会長岸田文雄を連続・専任では戦後最長の外相に据え、「安倍さんは岸田に禅譲する」との風聞を永田町に広めた。メディアは安倍が岸田に総理の椅子を禅譲すると語っているとまで伝えている。

この禅譲説が作為的なものであったことは2021年9月に行われた自民党総裁選で明らかになる。安倍は二卵性双生児と揶揄できるウルトラ右翼高市早苗を擁立。高市は、清和会を除名されていたにもかかわらず、会長の安倍が強引に担ぎ、第一回投票の国会議員票では岸田の146票に迫る114票を獲得した。これは岸田政権誕生を図ってきた麻生・米国サイドに対する安倍の反乱とみなされたはず。裏返せば首相在任中絶えず「100%米国とともにある」と口にせざるを得なかった安倍の本心があからさまに示された。高市は「総理になればずっと靖国神社参拝を続ける」と安倍の無念を代弁し、安倍とともに米ネオコン政権とDSを決定的に挑発した。この時点で安倍は米権力中枢に完全に見限られたと思われる。高市が2023年11月15日に勉強会をスタートさせ、これを通じて安倍派の一部を取り込み高市派の結成へと動いているのは、麻生・岸田の安倍派潰しの動きを事前に読んでのことではなかろうか。

こうしてみると安倍暗殺と安倍派解体の策動はつながる。しかし、2023年9月掲載の「安倍暗殺事件公判準備を巡る4つの謎 永遠に交わらない事件の「真相」と山上被告の起訴事実 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」などで強調したように、安倍暗殺事件の真相は迷宮入りの気配濃厚である。政治資金パーティー「裏金」疑惑で報道が過熱している際に安倍銃殺の実行犯として起訴された山上被告に対する公判が開かれれば、安倍派解体問題だけでなく安倍暗殺までが再び脚光を浴びる。安倍派の裏金疑惑と安倍暗殺を同時にメディアのヒートアップした話題にしたくないので山上被告の公判は”無期延期”となっているのではないか。

いずれにせよこれまでの論考で触れたように安倍派解体には疑いなく巨大な外部勢力の力が働いている。