米が対日報復に燃えた90年代、日本を食い漁る統一教会、黙認の自民

統一教会評判は韓国、米国ではさほど悪くない。異様な手口でひたすら金を巻き上げられたのは日本だ。霊感商法は1980年代に日本で社会問題化し、90年代に入ると信者に献金を強制する形に激化した。安倍元首相銃撃事件の山上容疑者の母親が教会に1億円もの献金をして自己破産、家庭崩壊したのもこの時期だ。日本経済が金融バブルを迎え絶頂に達したこの頃、米権力中枢は再び米国の脅威となった経済大国日本の弱体化に着手した。統一教会は米CIAとKCIAによって作られた宗教団体を装った政治工作団体であり、霊感商法被害や献金強要は統一教会を介した米国の対日報復、バッシングの一形態とも受け取れる。教会財源の7~8割を賄ったとされる日本で吸い上げた金の大半は韓国から米国に送られ、一部は自民党清和会(安倍派)に還流したとみられる。だから被害は黙認された。安倍政権の右翼的標語「日本を取り戻す」は米韓合同の「日本食い漁り」策略に便乗した「背徳キャンペーン」だったことになる。

<米の対日報復については7月25日付掲載論考「米政権の豹変と安倍国葬 「血を流せる国」にすると冷遇一転し絶賛」を参照されたい>

■日本教団は経済部隊:支援した清和会

1950年代の教団草創期から教祖文鮮明の右腕として活動し、統一教会の裏の裏を知り尽くしている人物が安倍暗殺事件を受けて7月19日に韓国で記者会見し、「日本の旧統一教会は『献金を作り出す組織』だった」と告白。また安倍銃撃事件について「旧統一教会に関係したすべての者に責任がある」と謝罪した。

この人物は旧統一教会のNO.2、文鮮明の側近中の側近だった郭錠煥(カク・ジョンファン)=写真=。教会本部が朝鮮植民地支配を贖罪させるとの口実で「日本の統一教会を経済部隊」と位置づけ日本を資金源としてきたことを認めた。86歳の郭錠煥は2009年に内紛で脱会しており、韓国の教団本部は「事実関係があまりにも違う」と反論した。だが日本の被害者救済に当たる弁護士は「郭氏は全てを知っている最重要人物。彼の言っていることは全て事実」と主張している。

 

日本教団を違法、異様な手口で日本人から金を吸い上げる経済部隊にした統一教会が日本の政権与党自民党に一貫して支援されてきた。これが最大の問題である。

発足したばかりのCIAは巣鴨拘置所にA級戦犯容疑者として拘留中の岸信介に接触を続け、絶対逆らわず米国の権益を擁護すること、すなわち日本を共産主義から守る防波堤とする政治活動に徹することを条件に1948年末、GHQに釈放させたことは間違いない。岸は1955年に保守合同で結党された自民党の傍流ではあるが派閥の領袖となり、今日の清和政策研究会(清和会)の源流を育んだ。

岸と旧統一教会との一体ぶりを示す決定的証拠は東京・南平台の岸邸の一部が1960年代に日本の旧統一教会本部となったこと。さらに1983年に岸が脱税に問われ米国で拘留中の教祖文鮮明の釈放を求める嘆願書をレーガン大統領に送ったことだ。

極めつけは1974年5月、文鮮明が東京・帝国ホテルで開いた「希望の日晩餐会」だ。岸が名誉実行委員長を務め、約2000人が集った会合には、自民党国会議員40人が出席したという。岸派閥の後継者で当時の福田赳夫蔵相は「アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明である。」とスピーチ、 福田は文と抱擁を交わした。 この映像はYouTubeで容易く検索できる。1976年に首相となった福田の派閥後継者が安倍晋太郎であり、派閥「清和会」は2000年の森喜朗内閣発足以来、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫が相次ぎ政権を掌握し、念願の自民党最大の主流派閥となる。

1990年代半ば、統一教会による被害が多発し大きな社会問題となった。警察は教会の摘発、強制捜査に踏み切ろうとしたが、それを断念した経緯がある。立憲民主党前参院議員・有田芳夫は当時の警視庁公安部幹部に統一教会本体の摘発は止めたと明かされ、止めた理由は「政治の力ですよ』と言われた」と述べている。要するに、政治家から圧力を受けて止めたということだ。流れからすると、自民党清和会の有力議員らの圧力となる。日本の警察はその有力議員の背後に米CIAやネオコン・米権力中枢の存在をひしひしと感じ取ったのであろう。いずれにせよ自民党清和会は日本人を食い物にする違法団体を支援してきたのである。

■巣鴨3人組:文鮮明=CIAの犬

福田赳夫は1978年の首相時代に上の文鮮明を礼賛したスピーチを国会で追及される。その答弁は「文鮮明氏が他にどういうことをしておるのか、そのことについてはいささかも承知しておりません」であった。この虚言の系譜は44年後に赳夫の孫で三世議員福田達夫が行った「旧統一教会と自民党の関係が批判されているが、『何が問題か分からない』」との発言に受け継がれている。

発言がSNS上で大炎上して慌てた福田は「わが党が、組織的に、党外の団体から強い影響を受け、それで政治が動くのであれば問題ですが、私の理解では、そのようなことは一切ありません。ただ、…個人として、その方の政治活動に非常に大きい影響を与えているのであれば、それは問題と思います。」と釈明したが、姑息な弁解と受け取られ火に油を注いだ。こんな中、教会関係議員の大半は自民党幹事長茂木敏充による「自民党と統一教会とは全く関係がないことが分かった」との発言に従いながら、傘下組織との接点を指摘されると「どんな組織か知らず講演、あるいは寄付した」などと福田赳夫の弁明を焼き直している。

旧統一教会との関係を秘匿することは岸の巣鴨拘置所からの釈放条件を固く守ることに通じる。巣鴨3人組の一人で岸の盟友にして右翼の大物笹川良一は1970年、東京であった政治団体「国際勝共連合」のイベントに参加したアメリカ統一教会幹部に胸を叩きながら「私は文(鮮明)氏の犬だ」と語ったという。それは米権力中枢CIAへの絶対忠誠を意味し、統一教会のための裏で活動する忠実なスパイ役・番犬であると自認したことになる。

「統一教会と自民党はCIAの子、兄弟組織」であることが明々白々となった中、日本の有権者は自民党議員たちの白々しい弁解、虚言を許してしまうのか。

米下院は1976年から1977年にかけこのコリアゲートを究明する委員会を開く。議長ドナルド・M・フレイザー下院議員(ミネソタ州選出)=写真=の名をとってフレイザー委員会と呼ばれたこの調査委員会は400ページを超える報告書を作成した。それによると、2万人の統一教会信者が賄賂、銀行詐欺、違法なキックバック、武器販売に関与していた。報告の核心は「統一教会そのものが、KCIAにより『つくられた』存在であり、第二次大戦後にKCIAを設立した主要な機関はCIAである」「ムーニーたち(統一教会信者)は米国の外交政策に影響を与える『政治的道具』としてKCIAと協力している」にある。

統一教会は韓国人、キリスト教の仮面をかぶったCIA主宰の米国の反共政治団体なのだ。フレイザー委員会報告書は、文鮮明は名ばかりの会長であり、ダミーとみなしている。統一教会がKCIA、CIA、ネオコンを動かす米権力中枢の『政治的道具』であるが故に、自民党、とりわけ「清和会」は絶えずその絶大な力に脅えて協力を余儀なくされてきたー。こう見なさざるを得ないのだ。

<7月21掲載記事「「冷戦・CIAの子、自民党と統一教会は兄弟組織」に矛先 安倍暗殺事件評」など統一教会関連論考を参照されたい>