米NATOとゼレンスキーとの間で高まる不協和音  「同調」する日本

ウクライナのゼレンスキー大統領に対する米国やNATO(北大西洋条約機構)加盟国からの風当たりが厳しさを増している。11月15日にウクライナとの国境沿いのポーランドの村にミサイルが着弾し、住民2人が死亡した事件を巡り、「ウクライナの防空(迎撃用)ミサイルが誤射、誤誘導された」との米NATOの見解に対し、同大統領は猛反発。「疑いの余地なく、ウクライナのミサイルではない。ロシアからの攻撃だ」「ポーランドとNATOとの合同調査にウクライナを参加させろ」と頑なに主張。米英からはゼレンスキーを見限るような発言が相次いでいる。日本の政界もこれに同調し始めた。

<注:本稿は11月17日付掲載論考「米NATO、初のウクライナ非難 G20宣言で露側に譲歩、方針転換の兆しか」を補完する続報である>

バイデン米大統領は「ウクライナのミサイルである証拠を示せ」とのゼレンスキーの求めを事実上無視し、代わってハンガリー首相府が 「世界の指導者は責任ある発言をしなければならない」と苦言を呈した。英フィナンシャルタイムズ(FT)電子版は「ゼレンスキーは公然と嘘をつき続けている。我々の信頼を損なおうとしている。」とのNATO加盟国外交官の指摘を報じた。FTは「ゼレンスキーの嘘はミサイルよりも破壊力がある」との同高官の発言も引用。ゼレンスキーは米英、NATOの厄介者にされつつある。

確かに、ウクライナの迎撃用ミサイルが誤誘導され、西方のポーランド方面に飛んだとのNATOの説明は不自然だ。ロシア軍のミサイル攻撃はウクライナの中部から東側に集中している。ウクライナ西部の上空を超えてNATO加盟のポーランド東部に届くような重大リスクをロシアがとるとは考えにくい。ロシアの仕業となれば、これでもかと「プーチン・ロシア=悪」とのレッテルを貼る中毒症に陥っている日本を含む西側メディアを喜ばすだけである。

今後の注目は、ポーランドとNATOとの現地調査結果の行方だ。だが「臭いものには蓋」の気配濃厚。確かなのは、「ミサイル以上の破壊力のある、ほら吹きゼレンスキーの口に蓋がされる日が近づいている」ことだ。

日本でも早速これに呼応する動きがあった。

森喜朗元首相が18日夜、「ロシアのプーチン大統領だけが批判され、ゼレンスキー氏は全く何も叱られないのは、どういうことか。ゼレンスキー氏は、多くのウクライナの人たちを苦しめている」と発言。報道に関しても「日本のマスコミは一方に偏る。西側の報道に動かされてしまっている。欧州や米国の報道のみを使っている感じがしてならない」と指摘し、岸田首相に対しても「米国一辺倒」と苦言を呈したと伝えられている。

3月2日付ハフポスト WORLD (huffingtonpost.jp掲載記事

ゼレンスキー大統領とは何者か。コメディー俳優から祖国を守る指導者になるまで 」

にこうある。

「(ゼレンスキーは)大統領就任からわずか2カ月で、ドナルド・トランプ前米大統領を弾劾裁判にかけるようなスキャンダルに巻き込まれ、汚職の疑惑に直面した。これとは別に、パンドラ文書では、彼と彼の親しいアドバイザー2人がイギリス領バージン諸島、キプロス、ベリーズにまたがるオフショア企業のネットワークを持っていることが明らかになった。

汚職撲滅に失敗したと批判されながらも、プーチンの軍事侵攻が差し迫る状況下でゼレンスキー氏の過去は大目にみられている。」

大目にみられてきた日々は去ろうとしている。

<注:ウクライナ戦争の根底にある米国の政治潮流を論じた2022年4月16日掲載記事「『エリート指導の武力行使で世界を変える』 ネオコンの狂気と新左翼の革命論」を参照ねがいたい>