007は2度死ぬ、ならばプーチンは何度死ぬ! 米英報道の正体

2022年2月にロシアが特別軍事作戦と銘打ってウクライナに侵攻して丸2年が経過した。西側メディアは昨今ウクライナのゼレンスキー政権が停戦に応じる気配をみせず、NATO援助と徴兵を強制する姿勢に懐疑の眼を向け始めた。作戦の始まった当初はこれとはうって異なり、ロシアのプーチン大統領は「稀代の悪人、無法者、殺人者、狂人、国際秩序破壊者」として米英主導の国際社会から永久追放された観があった。同年3月2日の国連総会非難決議によって西側演出の「プーチン悪魔化」は完成した。2024年ロシア大統領選挙を待たず、プーチンをできるだけ早く失脚、追放しようとの西側政府の意を受けて虚偽の報道を臆面もなく行ったのが米英メディアだった。プーチンはさまざまな種類のガンをはじめ重篤な病に侵され、余命いくばくもないとされた。ところが直近のタッカー・カールソンによる2時間を超えるインタビューに応じたプーチン大統領に病の気配はまったくみられない。虚報を垂れ流して恥じず、報道の自由を捨て続ける英米メディアへの信頼は地に墜ちた。007が2度死ぬのなら、プーチンは何度死ねばいいのか。

カールソンのプーチンインタビューに関して西側メディアは「新しいことは何も語っていない」とけなしながらも、かつてガンをはじめさまざまな重篤な病に侵されていると報じられ、すでに死んでいるはずのプーチンの体調については「きわめて元気そうだった」と恥じらいなく報じた。西側メディアがインタビューを徹底的に批判する一方、ユーチューブでの動画再生数は1億回を超し2億回に近づいている。このようにプーチン悪魔化の材料に事欠いている中、ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワルヌイが2月16日に収監されていた北極圏の刑務所で死亡した。するとバイデン大統領が急きょホワイトハウスで「死の責任はプーチンにある」と演説したのを受け、西側メディアは一斉に「プーチンによる暗殺」と断言して報道した。真冬に氷点下50度を下回る極寒の地に政治犯を収容するロシア政府の措置は極めて問題である。だが、ロシア大統領選挙1カ月前というタイミングでのナワルヌイ死去は西側メディアにプーチン攻撃の格好の新たな材料を与えることになり、「あえてそんなことをするだろうか」と首をかしげたくなる。

「プーチンは最大の政敵を潰して勢いを増し、選挙に圧勝することになる」。大半の西側メディアはこう報じた。3月のロシア大統領選挙を控えたプーチンが西側の嵐のような批判を呼び起こすための火種をまくようなことをあえてするだろうか。そもそもプーチンを何度となくガンや重病で殺してきた厚顔無恥な米英の報道などまったく信用性はないと断ぜざるを得ない。プーチンがあえてナワルヌイを殺害して火種をまくメリットがあると考えるような凡庸な”独裁者”であれば、政権を20年以上にわたり維持することは不可能である。プーチンの強いリーダーシップがなければ、ロシアは米英主導の攻撃に耐えて、中国と並んでグローバルサウスや「新たな国連に」との声が上がる上海協力機構(SCO)、同じく加盟国が急拡大する新興国連盟「0BRICSプラス」をけん引する国にはなれなかったはずだ。

ウクライナ戦争は確実に終焉に近づいている。戦争終結を見越して、戦後復興は「援助に疲れた米欧のG7に代わり日本に」という流れが出来つつある。4月の岸田訪米でそれははっきり見えてくる。ウクライナ戦争が一時的にせよ停戦すれば、G7各国は米英主導で再び艦船を西太平洋、南シナ海に集中派遣し、軍事演習を繰り広げ、中国を刺激し続ける。米英主導のアングロサクソン各国の軍事拠点はオーストラリア北西部のダーウィンであり、東シナ海へのコミットはできるだけ控えるだろう。台湾・尖閣への有事態勢はオフショアバランス戦略で日本へ丸投げすることは確実。ウクライナ復興支援という名の残務整理と東シナ海有事を巡るさらなる「軍拡」で日本は巨額の財政支出を強いられる。

ウクライナ戦争で潤おう米、中をしり目に日本の疲弊は進む。ロシアからはエネルギー、資源、食料の供給で冷たく扱われて当然。日本のじり貧の国情に激しい政権批判の声が国内では上がらない。自主的に退陣表明すべき水準にまで支持率が落ちても岸田政権降ろしは起きない。かつて日本が見下していた東南アジア諸国連合(ASEAN)は中国と協調して経済共同体形成を進め、米国の手中に収められてしまった日本を逆に見下し始めた。30年前には日本主導の経済共同体、通貨基金結成の声が上がっていたのが幻のようである。

ASEANの米国離れも急速に進んでいる。ウクライナ戦争勃発を受けバイデン米大統領は2022年3月29日、ホワイトハウスで「インド太平洋の未来に向けて、ASEANを中核に据えることを確約する」とASEANの重要性を強調した。ASEAN10カ国の全首脳との特別会合を開こうとしたが、そっぽをむかれ延期という名の中止となった。全首脳一堂に会しての共同記者会見のはずだったが、横にいたのはシンガポールのリー・シェンロン首相だけ=写真=。かつて親米の旗を高く掲げたシンガポールは米国をなだめるかのように唯一対ロシア制裁に踏み切った。バイデンの渋い表情が際立った。

 

 

 

 

 

 

日本のメディアが追随したプーチン末期がん報道の一部を下に掲載する。すべて英国メディアで情報源は「ジェームス・ボンドの活躍する」MI6など英諜報機関と思われる。

●英日刊紙デイリーメールは29日、ロシア連邦保安局(FSB)のスパイの暴露を引用してプーチン大統領が余命宣告を受けたほど健康が良くないと報道した。消息筋によると、プーチン大統領は最近医療陣に最長3年の余命宣告を受けた。FSB関係者は「プーチン大統領のがんが急速に進行している。生きられる期間は2~3年しかない」と伝えた。

●ウクライナ国防省の情報機関「情報総局」トップのキリル・ブダノフ局長は14日放映の英民放スカイ・ニュースのインタビューで、プーチン氏に関し「心理的にも肉体的にも非常に状態が悪い」と指摘し、「がんやその他の病気を患っている」との分析を明かした。ウクライナで苦戦が続いているため、露国内では政権転覆を図る「クーデター計画が進行している」とも主張し、「止められない動きだ」と語った。情報戦の一環として「プーチン氏重病説」を流しているとの見方については否定した。

英紙ザ・タイムズも14日、米誌を引用し、プーチン氏が「血液のがん」を患っていると報じた。ザ・タイムズが引用した米誌「ニュー・ラインズ」は、プーチン政権に近いオリガルヒ(新興財閥)の発言として、プーチン氏が2月24日のウクライナ侵攻開始前にがんの手術を受けたと伝えた。プーチン氏の健康状態を巡っては、甲状腺の病気や、パーキンソン病を疑う報道も続いている。

英ミラー紙はプーチン大統領の健康状態について「視力を失いつつある」と報じている。「頭痛に苦しんでおり、テレビ演説する際に使用する原稿は、すべて巨大な文字で書かれた紙が必要で、文字がとても大きいため1ページに数行しか入らない。弱さを見せることになるため、眼鏡を着用することを拒否している」と関係者のコメントを伝えている。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(70)の健康不安説が急速に拡散している。病名として挙げられているものはパーキンソン病からアスペルガー症候群、ヒューブリス(傲慢)症候群(hubris syndrome)までと多様だ。健康不安説の拡散背景にはウクライナ侵攻がある。プーチンが侵攻という決定を下したのは健康が良くないからという解釈がある。
新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)に伴う孤立感による精神的ストレスも挙げられている。ここに2008年プーチン大統領が自閉性障害の一種「アスペルガー症候群」があるという米国防総省の報告書に続き、最近では行き過ぎた権力によって性格全般が歪んでしまうヒューブリス症候群に陥っているという疑惑も出ている。症状は認知能力の減退、判断力の低下などだ。現在までは情況だけだが、英国テレグラフは1日(現地時間)、これを裏付ける5つの根拠を提示し、プーチンの健康不安説に説得力を与えた。