ウクライナ危機討議したG7緊急首脳会合 写真が示す微妙な米・仏独関係と日本の孤立 3月28日更新 

2022年3月24日にベルギー・ブリュッセルのNATO本部で開かれウクライナ問題を協議したG7緊急サミットで欧米メディアが配信した写真を幾つか掲載する。ウクライナへのロシア軍侵攻から一カ月。G7サミットは世界をリードする主要先進国首脳の集いとして発足して半世紀近く経った。だが今日、中国をはじめ新興大国の台頭で機能不全に陥っている言われる。写真を観察するだけでそれはよく理解できる。

欧州連合(EU)を離脱した英国が主宰者米国との一体性を誇示し、フランスが米英アングロサクソン同盟に対抗しそれなりの存在感を示そうと努めているのがよくわかる。微妙な米独関係も浮き彫りになっている。日本の報道では米欧と一括りにされるが、G7の主役米・英と準主役独・仏の4カ国の協調は一筋縄ではいかず、対ロシア政策を巡る今回の協議では深刻な不協和音が生じていることがうかがえる。

こんな中、日本の首相の存在感はまったくない。そもそも1975年のG5(米、英、仏、西独、日)による初サミット以来日本を参加させてきたのは驚異的な復興を遂げ欧米の戦勝国サイドの経済的な脅威となっていたたため、米欧が作ったいわゆる戦後の国際秩序とルールで日本を管理しその脅威を抑制、通商摩擦を緩和するためだった。日本の政府とメディアはG5参加を第一次大戦後のベルサイユ講和会議での5大国の仲間入りが再現したように描いてきたがそれは大きな情報操作であった。多くの日本人は誤解している。

下の写真2枚はバイデン米大統領が全体討議の合間、休憩時間に「盟友」ジョンソン英首相と鳩首凝議(きゅうしゅ-ぎょうぎ)するシーン。そこにマクロン仏首相が割り込もうとするが、マクロンは常に渋い顔で一歩退いている。ドイツ首相や日本の首相の姿は見えない。

「アメリカ幕府」将軍こと米大統領統治下の外様大名である日本の首相は仮に意見を求められても「イエッサー」と答えるほかない。将軍様に異論をはさむなどもってのほかだからである。上記のように元々日本にG7参加国の意思決定に与える影響力はほどんどなかったが、最近はさらに影が薄くなっているようだ。戦後日本の政治指導者には支配者である米国のエージェントとしてためらいなく従う卑屈さが貫いている。

 

下の公式な集合写真ではドイツのショルツ首相を真ん中に据え米英の首脳がそれを挟みつける形となっている。「ショルツよ、ウクライナのゼレンスキーが演説で叫んだ『ドイツが欧州とウクライナの間に設けた壁を壊せ』との声にを耳を傾けろ。ロシア孤立化はあんたにかかっている」。ショルツがこんな米英首脳からの圧力を跳ね返えそうとジェスチャーを交え何かジョークを発したのでバイデンは思わず苦笑いしているのかも…。両端にぽつんと立つ日本、イタリアの両首相の姿が寂しげだ。米独首脳の会話に耳を傾けるカナダのトルドー首相の隣でひとりぼっちの岸田文雄首相の笑顔は何を意味しているのか。イギリスのEU離脱を牽引したジョンソン英首相はどっしりと構え、片手をズボンのポケットに突っ込んだマクロン仏大統領は不機嫌さを隠さない。モスクワからの情報によると、プーチンは軍事侵攻の前に「英米とは何を話しても、議論にすらならない低レベルの会談しかできない。知性エリートのマクロンとは会話が成立する」と語ったという。

下の写真はカナダでの2018年G7サミットの一コマ。トランプ米大統領(当時)に詰め寄るメルケル独首相(同)率いるEU首脳たち。米国とEU・ドイツとの関係悪化を象徴した。