「中国の台湾侵攻」巡る3つの嘘 偽装の「日台有事一体」 2021年5月記事の再掲載

注:財源確保も定かにせず防衛費倍増へと向かい、中国を最大限に刺激する敵基地攻撃体制が整う中、記事の重要性と今日性が増したとみて再掲載する。

 

まるで「マッチポンプ」である。焚きつけて消す。焚きつけた親分は自ら火を消しながらも子分に後始末を任せる。もちろん親分は米国、子分は日本だ。米国政府は日本に手助けさせ、明日にも中国軍が台湾を攻撃するかのような危機感を煽った。菅首相の訪米を控え、米国は政府と軍が「中国の台湾侵攻」という重大危機の逼迫を演出した。そして4月16日の日米首脳会談後の共同記者会見で菅首相に「日本は防衛力強化を大統領に約束した」と明言させると、バイデン大統領は4月末、米議会で「中国との衝突は望まない」と覇権を争う中国への武力不行使を示唆する。一連の米政権の動きの目的は日本の軍備拡大であった。菅首相と大統領就任後初の対面首脳会談を実施すると発表し、永田町や霞が関を日本最重視」と舞い上がらせたのも、日本に防衛力を大幅強化させ米同盟国全体として対中抑止力を高めるためにほかならなかった。ともに核超大国である米中両国にとって台湾を巡る軍事衝突回避は至上命令だ。日本を前面に出し米国はリスク回避に努めている。「日台有事一体」を創り出した、3つの嘘を炙り出す。

■第1の嘘‐「6年以内に侵攻する恐れ」

米軍で台湾危機演出の主役を担ったのは米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官=写真左=だった。まずは3月9日、上院軍事委員会の公聴会で「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と証言した。

同司令官は「(遅くとも2050年までに)中国は米国の役割に取って代わろうという野心を強めている」と発言。その野心の目標の一つが台湾であるとして「その脅威は向こう10年、実際には今後6年で明らかになると思う」と語った。その根拠として中国が近年、台湾の防空識別圏に戦闘機や爆撃機などを侵入させて挑発を続けていることを挙げた。

さらに米領グアム、インド洋のディエゴガルシア島やグアムにある米軍基地への模擬攻撃の動画も公表していると指摘し、中国のミサイルを飛行中に撃墜できる「イージス・アショア」システムのグアム配備を求めた。

しかしながら、台湾の防空識別圏に戦闘機や爆撃機などを侵入させていることが中国による台湾侵攻の意思とは到底言えない。米国をはじめ日本の自衛隊、英国、フランスなどつい70年余り前までアジアを植民地支配していた欧米列強と称された帝国主義国の艦船が続々とインド太平洋に遠征して台湾海峡で「航行の自由作戦」を実施、東シナ海や南シナ海など中国の近海で頻繁に合同軍事演習を行い束になって封じ込めの意思を示している。このかつてない強大な圧力に対して中国人民解放軍は傍観するわけにはいかない。挑発しているのは米国側ではないのか。

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