数字でみる「学術会議騒動の核心」 戦後体制の解体進む

日本の学術研究を縛る戦後レジュームを解体するー。先の戦争がもたらした惨禍への痛苦な反省の上に日本の学術研究者は大学やその研究機関での軍事研究を拒んできた。その総本山が日本学術会議であったが、安倍前政権を継承する菅政権は学術会議を恫喝して学術分野でも戦後レジュームからの脱却を図っている。こうみると今回の会員任命拒否騒動の背景と核心がより理解しやすい。

2004年の国公立大学の法人化がその出発点である。要するに、文部科学省は行政改革の名の下、大学運営に新自由主義=民営化路線を導入した。各大学に支給する科学研究費(科研費)や人件費は抑制し、不足分は産学協同などで自前で賄えというわけだ。

実際、国立大学法人運営交付金は初年度2004年の1兆2,430億円から2013年には1600億円余り削減され1兆792億円にまで落ち込んだ。しかも有力校を中心に重点配分が進み、地方大学の中には地域中核大学と連携せねば運営が不能となりつつある学校もでてきた。頂点に立つ東大もこのほど200億円規模の大学債発行に踏み切り、話題になったばかり。これを東大民営化の第一歩とみる向きもある。

こんな中、2015年10月に防衛装備庁が新設された。自衛隊を米軍の補完部隊として世界のどこにでも動員可能な新安保法制の成立直後のことだった。その半年前に改定された新日米防衛協力ガイドラインには「防衛装備・技術」での日米協力の推進が謳われており、装備庁には研究開発資金交付のための安全保障技術研究推進制度が設けられた。

大学などでの軍事研究を助成するこの制度は初年度(2015年)交付金の3億円が2017年には早々100億円を上回った。軍事研究に縛りをかけている日本学術会議が方針転換すれば、交付額は一気に1000億円超えもあると予測されている。

ネットには「軍事研究拒否など時代にそぐわぬ絵空事」、「化石化した日本学術会議は解散せよ」と政権を支持する声も目立つ。集団的自衛権行使容認による実質改憲を筆頭に、皮肉にも菅・安倍政権のお株を奪うかのように、米国主導で戦後レジュームは着実に解体が進んでいる。