民主主義破壊したのは憲法九条空洞化した安倍政権 元首相暗殺事件短評

テロは民主主義を破壊する暴挙ー。7月8日の安倍晋三元首相襲撃に際し、金太郎飴のような論評が各メディアに溢れている。だが2015年の安倍内閣による集団的自衛権行使容認に基づく新安保法制施行は憲政史上最大の暴挙であり、民主主義の破壊だった。憲法遵守義務を踏みにじり憲法九条を牽強付会に捻じ曲げた。「米国とは100%共にある」と語って憚らなかった当時の安倍首相と有識者懇談会メンバーを中心とするその取り巻きには法理ではなく、対米隷属がすべてであった。

7月10日の参院選挙ではただでさえ優勢だった自民党に大量の弔い票が加わる。想定を超える自民圧勝が確定した。メディアの伝える「世界がその死を惜しむ」「多大な功績を残した」「日本の宝」などの度を越えた賛辞フレーズが相当数の有権者の心を動かしている。「死者に鞭打たず」は日本人の美徳とされる。だが民主主義は情緒とは相いれない。それはポピュリズムに利用される。

最も痛手を受けるのは、米側である。ネオコンやジャパンハンドラーにとって安倍氏に代わる有力な代理人がいなくなったからだ。米側の対日要請をいかなるものであれ受け入れ党内異論を封じて上手く取りまとめるキーパーソンを失った痛手は大きい。安倍氏に白羽の矢を立て、育成し、「最高権力者」つまり「最も利用価値のある日本の米代理人」に押し上げるのには相当な年月を要した。

冷戦終了とソ連崩壊に伴い実現したばかりの米単独覇権下の1993年に国会議員となった安倍氏は、2006年には戦後最年少の51歳で内閣総理大臣に「登用され」、米ネオコンの世界支配構想のコマとして使われる日本サイドの総支配人役を務めた。近日中に「『戦後の終焉』告げた日本のNATO「加盟」 米単独覇権と安倍晋三」を掲載する。ここ30年にわたる日本のNATO参入の動きを追い、その「主役」が安倍氏であったことを論じる。

 

  • 【写真】2007年1月にNATO本部で日本の首相として初めて演説した安倍晋三首相

2020年11月23日掲載記事「『日本の右翼政権に軛かける』 新日英同盟と拡大NATO 」添付写真