グテーレス事務総長辞任求める傲慢なイスラエル 国連無視の背後にネオコン・米英権力中枢 

イスラエルの国連大使がまたものすごい発言をした。グテーレス国連事務総長は10月25日に「パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた」として、ガザ地区の現状を「国際人道法違反」と発言。するとイスラエルのエルダン国連大使は「テロを正当化している」と反発。グテーレス氏の即刻辞任を求め、グリフィス国連事務次長(人道問題担当)のビザ申請を拒否した。コーヘン外相は「グテーレスは恥を知れ」とまで語った。イスラエル政府は国連に対し「俺たちの後ろに誰がいるかを知っていての発言は許さない」とヤクザまがいの恫喝をしている。背後にいるのは米ネオコンとそれを操るアングロサクソンユダヤ権力中枢である。この報道関係者なら誰もが知っているはずの事実を報道しないので、ことの真相が見えなくなる。

米政府を牛耳るネオコンの本音はガザの壊滅である。米、イスラエル両政府にとって、260万人のガザ地区住民がどうなろうと知ったことではない。イスラエル政府関係者にはパレスチナ人を「人畜」と口にする者もいる。米英権力中枢の代理人ネオコンは1990年代初頭までに東西冷戦が終焉、ソ連邦が崩壊したを受けて、「今後の世界の運営は我々が行う。米国に逆らう勢力は許さない」と米単独覇権を唱える1992年国防指針を打ち出し、事実上「国連の解体」を宣言している。この指針は当時のネオコンの頭目の一人、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(ブッシュJr大統領時代に世界銀行グループ総裁に就任)が取りまとめた。

現職で米外交の表舞台に立つブリンケン米国務長官、ヌーランド米国務次官らは誰もが知るネオコンであり、三者はいずれもナチスに迫害された東欧系ユダヤ人移民の子孫という共通点がある。さらにジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官、オバマ政権下、ヒラリー・クリントン国務長官とバイデン副大統領の右腕としてネオコン外交を繰り広げた。

ユダヤ=シオニズム、ネオコンの立場から自由な社会民主主義者、グテーレス国連事務総長(ポルトガル首相)らリベラルな欧州知識人にとって植民地主義国家イスラエルによるパレスチナ民間人殺害、ガザ人口密集地への空爆、医療機関、国連管理下学校への攻撃など「ハマスへの報復」を名目にする暴虐の数々は許容範囲をはるかに超えている。「テロを正当化している」と反発し、グテーレス氏の即刻辞任を求めるイスラエル政府に対し、グテーレス氏は 「私がハマスのテロ行為を正当化しているかのように、発言の一部が誤解されている。ショックだ、誤りだ、真逆だ」と弁明。まるで蛇に睨まれたカエルのような立場に追い込まれている。

毅然としてシオニスト、米英アングロサクソン勢力に立ち向かうこのような良識ある人物がなぜ国連事務総長に選ばれたのか。それは旧植民地国家米欧日・G7とこれを取り巻くごく少数のアングロサクソン同盟国を除き、2021年7月現在193か国とされる国連加盟国の大半がグテーレス氏を支持しているからだ。2016年、2021年ともに安保理、総会の満場一致で事務総長に選任されており、米英は旧被植民地・途上国の勢いに圧倒されて拒否権の発動を拒まれた。

パレスチナ自治政府外務省は、グテーレス事務総長に対するイスラエルの反発は「不当」と断じ、国連への敬意や法順守精神の欠如を示していると主張した。しかし、米英の本音に国連への敬意や国連憲章・国際法順守の精神はなく、イスラエル政府の不遜な対応はこれを後ろ盾にしたものだ。ハマス奇襲を発端とするイスラエルのガザ攻撃を黙認する米英政府の姿勢はウクライナ戦争を巡る執拗なロシア批判の矛盾を露呈している。

今回の事態について日本政府すら「シェイク・ジャッラーハ地区を含む東エルサレムのパレスチナ住民に対する強制立ち退き命令の可能性は、事態を更に悪化させかねないものと指摘せねばなりません。また、イスラエル政府当局による東エルサレムにおける540棟の入植地住宅建設計画は、我が国が国際法違反として幾度となく撤回を求めてきたイスラエル政府による入植活動の継続にほかならず、まったく容認できません」(外務報道官談話)とイスラエルを批判する中、中山泰秀防衛副大臣は「私達の心はイスラエルと共にあります」とSNSで述べている。このSNS発言も米英の後ろ盾のあっての日本支配層の本音であろう。

 

注:直近の記事「ハマスはイスラエル攻撃で米国製武器使用 ウクライナ戦争の闇とハマス奇襲の怪  | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」や「欧米列強に対抗する新興国の結集体=E7 G7の衰退、ウクライナ戦争と対露制裁で加速 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」など米英・G7の衰退を論じた論考を参照されたい。