主敵は中国にあらず、日本にありー 虚構の日米同盟

バイデン米大統領は就任以来「中国が攻撃すれば米国は台湾を防衛する」と発言する一方で、「米国が中国と武力衝突するとの懸念はない」「米国は中国と戦争はしない」と繰り返し強調してきた。これは何を意味するのか。本ブログは2023年8月掲載記事「米国に台湾とともに戦う覚悟はない 麻生暴言の裏で進む米軍の西太平洋からの撤収2022年12月に再掲載した「「中国の台湾侵攻」巡る3つの嘘 偽装の「日台有事一体」」などで訴えたように、「中国と交戦する」のは「台湾有事は日本有事」とプレッジした日本である。オフショアバランス戦略を採用する米国は中国と戦わず西大西洋から撤収し、背後で日本を指揮し「台湾を防衛する」ということだ。ことここに及んで「米国は安保条約に基づき日本を守ってくれる」と素朴に考えている日本人は「お花畑」である。日本人は決して先の敗戦を抱きしめて」いない。中国包囲網の主要なコマとなりながらも、日本は潜在敵国なのだ。台湾有事や中国の侵攻を口実に防衛負担を可能な限り重くして日本をさらに弱体化するとの合意が米中間できていると考えたほうがよい。「日米同盟」は虚構である。

1971年に極秘に訪中したヘンリー・キッシンジャー(1923-2023)は当時の周恩来首相との会談で「日本を経済大国にしたのは大失敗だった」「敗戦から3か月で軍国主義から民主主義に変わった日本人は決して信用できない」と語った。「日本は野蛮な国だ。経済大国になった日本に軍国主義が復活しないか心配している」との懸念を表明した周恩来に対し、「総理、日米安保条約は日本を守るためではなく、世界を脅かしかねない日本を縛り付け封じ込めるためのものです」と伝えた。いわゆる「日米安保条約=ビンの蓋」の伝説はここから始まった。「もし日本が脅威として再び台頭すれば我々は共同して対処する」とのキッシンジャーの発言に対し、周恩来は「その際は伝統的な米中関係がものを言う」との認識を示した。

この周恩来、キッシンジャーの戦略的やりとりを率直に受け止めれば、上のバイデン発言の意味することを理解できる。中国保有外貨・米ドル=米国債を売り浴びせれば米国の世界支配はクラッシュする。米経済の中国経済とのデカップリングは事実上不可能である。米現政権にとって米国を脅かす大国となった中国の弱体化以上に、敗戦後も「奇跡の成長」を遂げ米国をはじめ西側諸国を再び脅かした日本をさらに弱体化することが必要なのだ。「失われた30年」は2度目の日本の対米敗戦である。日本の優良企業の多くが米資本の支配下に入り、日本保有の米国債は売らせず、借金踏み倒しが可能。衰退する米国の補完勢力としてぎりぎりまで日本の経済成果はしぼり取られ続けることだろう。

キッシンジャーはフォード政権退陣と共に国務長官を退任。ジョージタウン大学戦略国際問題研究所(CSIS)に招かれた。今はジャパンハンドラーの巣窟となっているCSISはドイツの地政学カール・ハウスホーファーの弟子エドモンド・ウォルシュが1919年に同大学内に設立。1987年にジョージタウン大学から独立した研究機関となり、米陸軍などアメリカの国家安全保障グループと一体となっている。キッシンジャー理事を務め、顧問にもなった。キッシンジャーと弟子のブレント・スコウクロフト、本ブログにたたびたび登場するズビグニュー・ブレジンスキーも理事を務めた 彼らの多くが国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めている。

 

【写真】1948年東京のGHQ本部ビルにダグラス・マッカーサーを訪問したCSIS創設者エドモンド・ウォルシュ。占領政策が対ソ冷戦重視へと舵を切り、GHQ民生局のリベラル派・ニューディラーが本国に追放される時期にウォルシュは訪日している。ユーラシア(中露)を睨む地政学的要衝としての日本を半永久的に管理することが討議されたとみられる。

 

 

 

 

 

「集団的自衛権行使は合憲」と安倍政権に閣議決定で容認させたアーミテージ・ナイ報告書の筆頭執筆者リチャード・アーミテージもヘンリー・キッシンジャーの愛弟子である。岸田首相はこの4月米議会で「日本は世界のどこでも米国とともにある」と日米グローバルパートナーシップを謳ったが、所詮彼はキッシンジャーの掌で踊る操り人形にすぎなかった。その姿は滑稽でありもの悲しくすらあった。

憲法9条もリアリズムの目で見れば、もうひとつの「ビンの蓋」である。アーミテージらは集団的自衛権を行使できる自衛隊を米軍の指揮下に置くことを可能にした2012年の第三次報告書で改憲禁止を命じている。米国の目的がポツダム宣言を維持し日本を決して軍事・外交的に自立させないところあると考えるのは当然のこと力の均衡によるリアリズム外交に徹し、米覇権維持のためなら臆することなく敵と手を握ったキッシンジャーの根深い対日不信が米政界から払拭されることはなかろう。日本人は米英が日本を「東の要となる同盟国」と持ち上げながらもなぜ敵視し続けるのかを深く考えねばならない。

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