間もなく2年目を迎える新型コロナウィルス”騒動”に違和感を払拭しきれずにいる。言葉を換えれば、本ブログでかつて書いたように「それほど大騒ぎすることなのか」という疑念が脳裏を離れないできた。ある年賀状には「ニュースを見るたびにアナウンサーがまるで嬉々として何か世界記録が更新されたかのように日々増加する感染確認者数を伝える。もううんざり」と記されていた。1月3日。首都圏の自宅近隣にある運動公園は様々な遊戯に興ずる親子連れでかつてないほどにぎわっていた。政府、自治体の「ステイホーム」の掛け声の”嘘っぽさ”を人々はもう見抜いている。政府当局自体が「COVID-19 によって起こる症状のほとんどは軽度から中程度であり、特別な治療を受けずに回復します」と広報している。実態は、「風邪+α」ではないのか?そこで新たな疑問がわいてくる。「何のために政府は事態を誇大に騒ぎ立てているのか」。
■「インフルエンザ並みの扱いで良い」
まずは明快にこの”騒動”に異議を申し立てている唐木英明・東大名誉教授(獣医薬理学)の発言を引用する。
「新型コロナ対策を抜本的に見直すべきだ
弊害を生んだ高リスク感染症扱い
対策の決定と国民への情報提供に大きな役割を果たしたのが政府の専門家会議だった。関係者が連日テレビで「3密」防止、接触の8割減少を呼びかけ、このままでは40万人の死者が出ると警告するなど仮想の数字で恐怖感を煽り、緊急事態宣言の発出を求めた。NHKも日々の感染者数を大きく報道して恐怖を拡大した。国民は外出自粛と営業自粛という過剰な対策に協力せざるを得ず、恐怖感から偏見、差別、私的な「自粛ポリス」の出現など多くの弊害が生まれ、経済は重大な被害を受けた。
その後、政府は負の影響が大きい緊急事態宣言を解除したのだが、専門家会議(現在は分科会)は医師会とともに医療崩壊の危機を叫んで新たな自粛を求め、旅行業と外食業の窮地を救うためのGoTo事業も感染防止の名のもとに中断された。
そもそも人口当たりのベッド数が世界最多の日本で医療崩壊が起こる理由は、2類感染症のための少数の重点医療機関に、感染者の8割を占める軽症、無症状も含めて感染者全員入院させたためだ。それでも重点医療機関のベッドは全国で半分以上空いているのだが、感染者が急増した地域の特定の重点医療機関だけが医療崩壊状態になる。局地的な危機は全体の協力で防ぐことができるのだが、政府も分科会も医師会も問題解決の努力を放棄し、その解決を国民の自粛に求め続けている。2類扱いの被害は保健所にも及び、感染経路の調査や感染者の入院先の選定などに忙殺され、通常業務が困難になっている。
インフルエンザ並みの対応でよい
2類扱いは新型コロナの実態に合わず、その弊害は極めて大きい。安倍晋三首相は8月の退任表明会見でインフルエンザと同じ5類扱いに変更する方針を発表し、メディアは2類と5類の解説を始めた。これで医療、社会、経済の多くの被害をなくすことができ、2類扱いのために要した莫大な経費は高リスク者の感染防止と救命に集中することができ、ずっと多くの人命救助が期待された。
ところが厚生労働省は2021年1月で期限を迎える2類扱いを1年延長することにした。そうであれば、その運用を大幅に柔軟化して欠点を排除し、天災に輪をかける人災を軽減すべきである。」
上の唐木氏の指摘する2類(感染症)と5類についてはデイリー新潮の2020年11月14日付記事が以下のように説明し、同氏の主張を補強している。
「政府が新型コロナを「指定感染症」とする政令を施行したのは2020年2月。感染症法では感染症を危険度の高い順に1〜5類に分けており、当初、新型コロナが「2類相当」とされたのは、未知の部分が多かったためである。また、その後の政令改正で「無症状者への入院勧告」や「感染が疑われる人への外出自粛要請」などが次々と加わり、「1類」かそれ以上の措置が取れるようになった。ちなみに1類と規定されているのはエボラ出血熱やペスト。2類は結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、3類はコレラや細菌性赤痢、4類は狂犬病やマラリア。季節性インフルエンザは一番下の5類と規定されている。」
■5類に引き下げない理由
政府内でも5類への引き下げを容認する発言が出た。安倍前首相は昨年8月28日の「辞意表明会見」で、「(2類相当とされてきたコロナの扱いについて)これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を見直す」と語った。
しかしその後、安倍政権の政策継承を謳って誕生した菅政権が打ち出した「運用見直し」の内容には「5類に下げる」といった表現はなかった。
デイリー新潮の上記記事は日本の著名な国際政治学者に菅新政権が5類に下げなかった事情をこう説明させている。
「新政権は『新型コロナを過小評価している』『新型コロナの脅威を甘く見積もった』と批判されて支持率が下がるのを恐れますから、そういう点でわざわざ民意を刺激したくないだろうと思われます」「どうするべきかという“べき論”から言えば、新型コロナについては2類相当から5類相当の扱いを適宜アレンジする形にして、社会的なアラートレベルは下げるべきだと思います」
■中国憎悪を煽る
コロナ騒動の政治性は中国憎悪を煽るメディアに端的に表れている。
典型的なのは1月3日付の産経コラム(門田隆将氏)「【新聞に喝】それでも中国の味方を続けるのか」だ。
「コロナ禍で多くの人生や社会が変わってしまった2020年。想像を絶する感染者と死者を出した戦後最大の悲劇は2年目に突入した。
中国由来のウイルスが世界に命の重みを改めて思い知らせたが、同時に力による現状変更で国際秩序に挑戦し、人権を踏み潰(つぶ)す中国の姿も浮き彫りになった。2021年はこの厄介(やっかい)な隣国から自分たちをどう守るかを考え、行動しなければならない年になるだろう。しかし、そのことの壁になる新聞がある。いや、壁というより「中国のために」報道を続ける新聞である。
昨年9月、退陣前の安倍晋三首相が新たな安保政策として敵のミサイル攻撃を防ぐため、これまでの迎撃能力を上回る対策を検討して年内に結論を出すことを発表した。
これを受けて12月18日、敵の攻撃圏外から対処できる「スタンド・オフ・ミサイル」の国産開発が閣議決定。また、配備断念のイージス・アショア代替策として「イージス・システム搭載艦」との名称で新型イージス艦2隻の建造計画も明らかになった。
口には出さずとも、まさに中国を念頭にした防衛策である。抑止力を高めるためには当然すぎる決定といえる。
しかし、中国を利する論評はすぐに表れた。おなじみの朝日が12月19日付社説で〈破綻(はたん)した陸上イージスの代替策と敵基地攻撃能力の検討は、安倍前政権の「負の遺産」である。きっぱりと決別すべきだ〉と書き、毎日は、〈日米安全保障条約の下、日本は守りの「盾」、米国は打撃力の「矛」としてきた役割分担の見直しにもつながりかねない。専守防衛をなし崩しで変質させることは許されない〉(20日付社説)と非難した。」
唐木氏の主張を参照するまでもなく、少なくとも日本に関する限り、「コロナ禍で多くの人生や社会が変わってしまった2020年。想像を絶する感染者と死者を出した戦後最大の悲劇は2年目に突入した。」はいかにも誇張がすぎる。「中国由来のウイルスが世界に命の重みを改めて思い知らせた」との中国攻撃を始める導入として必要だったからであろう。
米ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、1月4日現在の新型コロナウィルスによる死者は183万9622人、うち米国は35万598人である。一方、中国当局によると、中国の死者は昨年4月17日段階の修正値4632人からさして増えていない。欧米の被害は極めて深刻と言えるが、人口が半減したかつての黒死病(ペスト)、天然痘などの流行や数千万人単位の死者を出した第一次大戦、第二次大戦の惨禍と比べるかのような書き方は大げさすぎる。
■小浜逸郎氏の指摘
小浜氏の「コロナ狂気がついに虐待を」(https://38news.jp/economy/17279)の前半を引用する。具体的数字を交えた適切な見解と思える。
「コロナ強迫神経症に日本人が罹患して、もう10か月近くたちました。おかげで経済も文化も無残に冷え込んでいます。そろそろこの蟻地獄のようなバカげた自殺行為から這い上がろうではありませんか。そもそも新型コロナの流行なる現象は、疫病の流行ではなくて、恐怖の流行という社会現象であり、その流行は何重ものウソによってでっちあげられたものです。
第1のウソ:陽性者と感染者の同一視
マスコミや自治体が発表している「感染者数」は、PCR検査で陽性反応が出た人の数であって、コロナの感染者ではありません。PCR検査では、マイコプラズマなど、新型コロナ以外のウィルスでも陽性反応を示します。自治体、マスコミはこのからくりを絶対に説明しません。
第2のウソ:感染者(じつは陽性者)の絶対数の増加をもって感染拡大としているこれは、マスコミや自治体が国民を煽る絶好の手段。「今日は感染者が初めて300人を超えました」などとどこやらの知事が、さあ私の出番とばかり「緊急記者会見」をやって自粛を呼び掛けます。
しかしこの知事たち(だけでなくそれをそのまま流すマスコミの記者たちも)は、そもそも割り算ができない小学生以下の知能の持ち主です。陽性者の絶対数がいくら増えてもそれ以上に検査件数が増えれば、陽性率はかえって減ることになります。昨日の陽性者が100人で検査件数が2000件なら陽性率は5%だけど、今日の陽性者が200人に増えてもその時の検査件数が5000人だったら、陽性率は4%に減りますね。
自治体やマスコミは国民を脅かすために、絶対数だけを発表して、感染が拡大したかどうかを示す陽性率を絶対に言いません。つまり分母を示さないのです。後述しますが、しかるべき資料に当たれば、これはすぐに見つかります。
第3のウソ:PCR検査を受ければ感染したかしないかがわかる
先述の通り、PCR検査で陽性と出ても、新型コロナであるとは限りませんが、それ以外にも、この検査の信頼度を疑わせるに足る専門的知見が出されています。この検査は、検体の部位や種類、感染や発症からの経過日数によって、その感度が大きく異なることが報告されています。一般に日数が経てば経つほどその感度は落ちます。
https://jeaweb.jp/covid/qa/index.html#:~:text=%E6%95%B0%E7%90%86%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%80%81%E6%84%9F%E6%9F%93,%E6%84%9F%E5%BA%A6%E3%81%AF62%EF%BC%85%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
だから検査を複数回行なうと、陽性だったのが陰性になったり、その逆の場合も生じます。しかし自治体やマスコミは、真相を言わず、この検査が確実であるかのように喧伝しているのです。
第4のウソ:夏に第2波が来て、第3波もこれから押し寄せる
陽性率が急増しなければ、第何波が来たなどといえないはずです。
厚労省発表のデータから計算すると、第2波が来たと言われた8月の陽性率は、4月と比べると以下のとおりです。
4月ピーク時(4月10日) 13.1%
8月ピーク時(8月7日) 7.8%
8月18日 4.3%
第2波など来なかったことがわかりますね。
では、最近はどうでしょうか。
11月22日 3.6%
なお騒がれている東京、北海道では、同じデータから計算すると、
東京11月23日 6.7%
北海道11月23日 5.6%
で、全国と比べるとやや高めであることがわかりますが、それにしても4月のピーク時と比べれば全然低いことがわかります。
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/?fbclid=IwAR2S54N_qvGv4pvErqYep9pud9caVBH44VsTj9dv0q5nXk8iq4ZnOyHd6xw
いずれにしても、大波が襲ってきたかのような報道はいかにも大袈裟です。この程度の数字で、自粛したり委縮したりする必要があるでしょうか。
第5のウソ:新型コロナは恐ろしい死を招く
それでも、もし重症になったり、死んだりしたら……と不安になるのが人情かもしれません。
しかし上の数字はあくまで陽性率です。陽性率=感染率ではありませんし、またこの感染症が子どもや若者にはほとんどダメージを与えないことはよく知られています。老人で持病持ちの人たちをたまに重症に追いやることがあるのですね。
そこで、これまで陽性者のうちどれくらいの割合で死者が出ているか、同じデータから、その数を計算してみましょう。
陽性者に対する死亡者の割合は、1.5%、検査件数に対する死亡者は、何と0.05%という低さです。つまり、延べ検査人数1万人当たり5人しか死んでいないのです。
しかもその5人のうち半分は80代以上、4人は70代以上です。
それくらい、どんな病気だって死ぬんじゃないですか。
第6のウソ:新型コロナは、他の病気と比べても猛威を振るう
これはまったくのデタラメです。
ここに2019年の死因別死亡者数を人口10万人当たりで示したデータがあります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20200929-00199953/
悪性新生物 304.2
心疾患 167.9
脳血管疾患 86.1
肺炎 77.2
不慮の事故 31.7
自殺 15.7
肝疾患 14.0
結核 1.7
老衰 98.5
これらの数字と比較すれば、新型コロナの死者が現在2000人ですから、多めに見て年末までに2500人に達するとしても、人口10万人当たり年間で1.98となります。結核といい勝負。いかに少ないかがわかるでしょう。
それに、ヨーロッパの人々は、日本人ほど大騒ぎせず、みんなクールにふるまっているという話をイギリス帰りの人から聞きました。またスウェーデンでは、重症者対象の治療に特化させており、在住日本人医師も、医療関係者でさえマスクをしていないと言っていました。
欧米諸国の死者数は、100万人中800人前後ですが、これも先ほど示した日本の人口10万人当たりの死因別の表と対照すれば80人くらいとなり、ふだん問題にもされない普通の肺炎死と同じ程度です。
以上、パンデミック、パンデミックと騒ぎ立てる日本のマスコミや自治体の強迫神経症ぶりを指摘してきました。2020年のコロナ騒動は、倒産や廃業や失業や自殺者を増やしただけの、じつに愚劣な一幕だった、と過去形で語っておきます。この「病気」が、来年まで持ち越さないことを切に祈ります。
■結び
遺憾ながら、小浜氏の祈りもむなしく、騒動は「2021年」まで持ち越した。今後は変異種ウィルスの発生でワクチン開発との「いたちごっこ」が続く恐れも大きい。しかも年明け早々東京と首都圏3県に1カ月間緊急事態宣言が発令された。
ところで、ドイツでは12月に入って日々3万人規模の新規感染者と700人を超える死者が出ていた。政治的自由を制限された旧東ドイツで育ったメルケル首相は「新型コロナウィルスの脅威を自由を制限される国民に向けてかみしめるように説き」、国際的にも大いに評価された。年明けの1月初めの感染者は一日当たり2万人前後、死者は同600~700人。ピークを越えたとの見方もあるが、予断は許さない状況だ。
ひんしゅくを買うことを恐れずに記す。
メルケル首相は「新型コロナによりドイツは第二次世界対戦以降最大の危機に直面している」とし、これを真剣に受け止めるよう国民に訴えかけた。これを「歴史的なテレビ演説」と評価するのはうなずける。だが、「第二次世界対戦以降最大の危機」との修辞に引っかかる。危機感は同感できるが、表現が過ぎている。やはり選挙を常に意識する政治家の物言いだなとの印象も打ち消せない。
こんな中、世界経済フォーラム(WEF)を主宰する経済学者クラウス・シュワブらがウォール街やネオコンと組んで資本主義をリセットしようと新型コロナ騒動を利用しているとの説が流布されている。新自由主義では飽き足らず、さらに富を寡占化するため超富裕・支配層が新たな戦略を密かに実行するため社会の収容所化を図っているというのだ。
しかし、コロナ禍を最小限に抑え込み、経済をプラス成長に転じて安定成長軌道へと立ち戻らせ、旺盛な国内市場の需要を喚起している中国。欧州連合(EU)も米新政権発足前にと急ぎ12月30日に中国との投資協定締結で大筋合意し、対中投資・輸出をコロナ禍で深刻度を増す景況悪化からの脱出の足掛かりにしようと懸命になっている。コロナ禍により中国の経済力が米国のそれを凌ぐ時期が早まった。このような状況では西側主体の世界経済の全面的リセットは不可能である。
また強制力のない緊急事態宣言を発令しても目に見えた効果は望めない。そこで菅・安倍政権は強制力のある特措法を施行し、最終的には改憲をして新憲法に緊急事態条項を盛り込むことを狙っているとの見方もある。しかし、本ブログで繰り返し指摘しているように、9条をはじめ「憲法改正」はワシントンが許さないし、不可能である。それを分かったうえで、「改憲派」はカモフラージュして運動を行っているだけだ。
今、言えることはこれだけだ。
冒頭の「何のために政府は事態を誇大に騒ぎ立てているのか」との問いに対する正鵠を射た答えはいまだ見つからない。少なくとも日本政府の対応に関しては…。