日中国交正常化記念交流封じる安倍国葬 遺言は日中関係破綻させる「敵基地攻撃能力保有」

選挙応援演説中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の国葬は9月27日。2日後の9月29日は日中国交正常化50周年記念日である。日中双方の首相や外相ら要人が東京と北京の間を行き来するのを封じ込めるかのような国葬日程である。岸田内閣は7月22日に早々と「国葬は9月27日に武道館で」と閣議決定した。だが対中融和派と見られてきた岸田文雄首相や外相就任直前まで日中友好議員連盟の会長だった林芳正外相が意図的に日中交流を封じるような日程を組むはずがない。安倍国葬を指示したのはワシントンであり、同時に日中交流の遮断を狙ったと見なさざるを得ない。そして安倍の遺言が中国を標的にした「敵基地攻撃能力の保有」であると内外にアピールし、日中関係をズタズタにしようとしているのだ。

岸田首相が8月16日に夏休み入りすると、米国防総省は動いた。

オースティン米国防長官は同日、新任の浜田靖一防衛相と電話会談した。翌17日にはラーム・エマニュエル駐日米大使が防衛省を訪問し浜田と会った。防衛省の発表によると、二日間の会談の内容として、日本のEEZ内への着弾を含む中国による弾道ミサイルの発射を非難し、地域におけるいかなる事態にも対応できるよう緊密かつ隙のない連携を図っていくこと、日本が年末までに策定する国家安全保障戦略などを通じ、防衛力を抜本的に強化することを米側と確認した、などが挙げられた。

日頃は在京米国大使館に日本の高官を呼びつけるのを慣例にする米側が日本のメディアを集めて新任大臣への表敬訪問の形をとったのにはわけがあった。それは中国が秋葉剛男国家安全保障局長を招き中国の外交を統括する楊潔篪共産党政治局員と8月17日に会談するとの情報を受けてのことだった。日本側の発表によると、日中の会談は天津で予定通り行われ、「秋葉氏は中国が台湾周辺で行った大規模な軍事演習を非難し、地域の平和と安定の重要性を伝えた。両氏は対話を継続していくことで一致した。」など当たり障りのない報道発表がなされた。

米側の懸念は防衛費のGDP比2%以上への引き上げに「慎重」と言われる浜田新防衛相に向けられていた。就任会見で浜田は「必要な事業をしっかり積み上げる」と述べるにとどめ、金額ありきの議論とは距離を置いた。また安倍に重用され防衛費増額論を主導した島田和久前防衛次官=大臣政策参与=を事実上更迭するなど腹の据わった言動が目立っているからだ。浜田はオースチンにもエマニュエルにも「防衛費を抜本的に拡充」と伝えたが、GDP2%という数値は口外していない。

天津で秋葉、楊の両氏は、日中両国の「建設的かつ安定的な関係」の構築に向け、双方が努力する必要があるとの認識で一致し、対話を継続することを確認したとされる。中国メディアは「9月29日に日中国交正常化50年の節目を迎えることを踏まえ、両政府は、日中関係の再構築に動き出すとみられる」と報じた。中国側は早速動いている。

北京から9月29日に習近平国家主席が田首相とオンライン首脳会談を企画しているとの話が伝わった。中国側の報道からは、「日本が台湾問題に干渉しないこと」を条件に50周年を機に日中関係を改善したいという中国側の意思がありありとうかがえる。

この日中間の動きに水を差すかのように日本の大手メディアは中国に向けた「反撃」という名の攻撃用ミサイル配備計画を大々的に報道した。報道内容は米国防総省系シンクタンク・ランド研究所が今年発表したインド太平洋地域における中距離弾道ミサイル配置に関するレポートに基き、防衛省が来年度予算の概算要求に明らかに中国本土を射程に収める長射程ミサイル部隊の南西諸島配備を盛り込むという内容だ。

米軍はここ10年中国の接近阻止戦略の要である米軍艦船を標的にした地対艦ミサイルの配備拡充に頭を悩ませてきた。射程500~5500キロメートルの中距離核戦力(INF)含む弾道ミサイル戦力を充実した中国を抑止するためインド太平洋地域でそれに対抗できるミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとされている。

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Key Findings

A U.S. strategy that relies on an ally agreeing to permanently host GBIRMs risks failing because of an inability to find a willing partner

  • As long as Thailand continues to have a military-backed government that pursues closer ties with China, the United States would not want Thailand to host GBIRMs — and Thailand would be highly unlikely to accept them anyway.
  • The U.S. alliance with the Philippines is in flux. As long as a president continues policies toward the United States and China similar to those of President Rodrigo Duterte, the Philippines is extremely unlikely to accept U.S. GBIRMs.
  • Chinese opposition to the ROK hosting a U.S. defensive missile system, the ROK's susceptibility to Chinese pressure, and a deterioration of U.S.-ROK relations suggest that it is highly unlikely that the ROK would accept U.S. GBIRMs.
  • Although Australia's strong historical ties with the United States means that the possibility that it would host U.S. GBIRMs cannot be ruled out, its historical reluctance to host permanent foreign bases and its distance from continental Asia make this unlikely.
  • Because of Japan's willingness to strengthen its alliance with the United States and bolster its defense capabilities, Japan is the regional ally that appears most likely to host U.S. GBIRMs. However, that possibility remains low.
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この中国側のミサイル発射基地を艦艇、戦闘機、地上から発射して攻撃する長射程ミサイル配備こそ安倍の遺言となった「敵基地攻撃能力」の具体化である。自衛隊が米軍と集団防衛できる新安保法制の成立以降、安倍の頭からは専守防衛という歯止めは吹っ飛び、攻撃を「反撃」と言い換えることを拒んだ。

米国は「台湾有事は日本有事と受け止めよ」と日本に圧力を加えてきた。安倍が執着していた「敵基地攻撃能力の保有」は米国へのこの上ない忠良な置き土産である。2023年配備が正式決定すれば、中国からは激烈な対日批判が沸き起こり、関係改善を目指す日中交流は泡となって立ち消えることになる。

米国は岸田政権が9月29日に向けて中国の関係改善の呼び掛けにどう反応するかを注視している。日本側の動きは遅くとも9月27日までにはっきりする。答えは出ているようだが…