天皇家と統一教会巡る風説考:繋がるロックフェラー、天皇、CIA、文鮮明  12月22日更新

安倍元首相暗殺事件を機に、天皇家と統一教会が関係しているとの憶測がネット上に出回っている。例えば、「統一教会の文鮮明教祖は、天皇家の三笠宮一家と、食事会をしたことがあるって、ほんとう?」などといった類の問いである。あえて答えれば「非公然な食事会などの交流があったとしてもおかしくない」となる。安倍暗殺以降、ともにCIAに組織された統一教会と自民党との関係が明るみに出て、大論議となっている。これを掘り下げると、ロックフェラー財閥、天皇家、ダレス兄弟、CIA、文鮮明・統一教会は一つの線で繋がる。ならば「皇族と文鮮明の接触はあり得る。本ブログに掲載された過去記事をリビューしながら、統一教会は米国の冷戦初期東アジア政策に端を発し、長く日本の戦後社会を蝕んできた問題であると提起したい。

<注1>10月22日掲載記事「旧統一教会解散決意した岸田首相 連動する安倍派解体でどうなる日本」の「■CIA、統一教会、米権力中枢」や「■アレン・ダレスと破壊工作機関CIA」が参考になる。また天皇家とロックフェラー家については昨年12月掲載の「小室夫妻NY亡命が示唆するもの 米国の私的権力と天皇家の絆」を参照されたい。

<注2>あるブログには三笠宮と文鮮明及びその家族とされる写真が掲載されている。ただし、写真左上1番目を常陸宮華子さんとするなど明らかな誤りが見られる。末尾の「統一教会は日本の天皇制を規範としています。1880年代に創作された近代天皇制は、カルト教組織として文鮮明の統一教会のモデルなのです。」との指摘には同意する。

■米権力中枢の対日観

CIAによる統一教会創設は、国際反共運動を背後で率いたロックフェラーを筆頭とするニューヨークに生まれた米権力中枢の意向による。彼らは第二次大戦(日米戦争)の終結過程で、皇国日本という天皇信仰に侵された日本人が狂信的な反米主義者であるだけでなく、同様に狂信的に反共洗脳されていることに着眼した。「この激烈な天皇信仰と一体の反共主義を朝鮮戦争休戦によって冷戦の最前線となった韓国の民衆に移転しない手はない」と考えた。こう推察しても大過ないはずだ。

空襲で国土が都市部を中心に焦土と化し、軍がほとんど戦闘能力を喪失し、軍需生産施設はほぼ壊滅するに至っても、「国体護持(天皇制存続)が保証されていない」としてポツダム宣言受諾を拒み、「本土決戦一億玉砕」「大和魂・聖戦完遂」を叫び初の原爆被爆という大災厄を招きよせた日本人。彼らは日本人を天皇教というカルトに染まっているとみなしたはずだ。「日本人は権力者への服従というレベルを大きく超え天皇を絶対者・現人神として崇め天皇のために死ぬことを義務であり名誉と教え込まれていた。」したがって米権力中枢にとって日本人は祭政一致の異様な前近代世界に生きていたことになる。

■統一教会:天皇教の韓国移転

韓国の最大宗教であるキリスト教の信者は人口の3割超を占めていた。キリスト教と反共主義の合体は世界中に受け入れられている。そこでCIAはGHQ参謀二部長で防諜・赤狩りで名を馳せたチャールズ・ウィロビー少将=写真=が朝鮮戦争中に北朝鮮から韓国に連れ戻してきた特異な洗脳能力のある文鮮明に目をつけた。

文に創設させた世界基督教神霊統一教会はキリスト教まがいの教義に道教、仏教、儒教、先祖供養など東アジア土着の教理や習俗的思考をごちゃ混ぜしたものだ。CIAにとって肝要なのは文鮮明を日本の天皇と同様、カリスマ・絶対者に仕上げることだった。できるだけ多くの人を文鮮明とその教義への信仰という形をとって洗脳したかったのである。反共洗脳は非軍事的手段としては最も強力な反共防波堤となるからだ。

国体護持する駐留米軍

ロシア革命で皇帝ニコライ二世一家が処刑されたことは天皇家のトラウマとなっていた。裕仁天皇をはじめ皇族は戦後の民主化で「天皇制打倒」を叫ぶ共産党が復活し、労働運動や民衆抗議が過激化しており日本で容共の社会主義政権が樹立するとの恐怖に脅えていたのだ。そこで裕仁天皇はマッカーサーの頭越しにジョン・F・ダレスに占領終了後の米軍駐留継続、米軍による沖縄の半永続的軍事占領を申し出る。密談は数回に及び、講和条約締結前の1951年1月にはジョン・ロックフェラー3世も直接参加して講和と安保条約締結を巡り討議した。

そこには憲法に定められた「国民の総意による」象徴天皇制は全く無視されていた。現憲法は1条からして空文化されていたのである。この辺の動きは日本の戦後政治史研究者が一次資料を駆使した画期的な労作で教えてくれている。

米軍の永久駐留、すなわち日米安保条約と地位協定の締結は元来「米国の権益を守り、天皇制を擁護する」ためのものであった。米国に日本を防衛する義務を定めたとされる安保条約5条は「日本を外敵の侵略から守る」とは何ら明記していない。曖昧なその文言と自衛隊の専守防衛義務などそもそも空文なのである。

安保条約は共産主義から天皇制を護持するものであり、日米安全保障条約の締結こそ日本の国体を天皇制から対米従属体制へと転換するものだった。

1953年に就任したアレン・ダレス長官の下、CIAは米権力中枢のための非合法な破壊工作機関へと変質する。上記のように米権力中枢の筆頭ロックフェラー3世は1951年初め、ジョン・ダレスとともに米財界人を率い航空機数機をチャーターして自らニューヨークから東京に乗り込む。天皇主催の晩さん会への出席、旧知の三井本家の人々をはじめ旧財閥関係者、有力保守政治家、昭和天皇側近の旧宮中グループなどの助力を得て戦後日本の反共防波堤作りに尽力した。

■米権力中枢と一体化した文鮮明

ウキペディアによると、文鮮明は1962年10月に米国でロックフェラー3世の実弟で世界の金融をリードしたデイビッドネルソン、さらに当時のCIA長官ジョン・マッコーンや米軍トップ層と会談。1972年2月にはホワイトハウスでニクソン大統領と会談している。日本では前年の1971年1月に当時の皇太子夫妻(上皇明仁上皇后美智子)=写真=が文鮮明創設の「リトルエンジェルス芸術団」の日本講演を鑑賞している。

文は日本で集め韓国から送られた資金で米国で一大ビジネス集団を率いることとなる。レーガン、ブッシュ父子の大統領当選は教団の資金援助なしには考えられなかったとされる。文鮮明は米権力中枢とCIAの支えで米国政治にも多大な影響力を発揮した。

統一教会は破壊工作機関CIAと一体となった宗教団体を装った組織だ。したがって、ソ連が崩壊し東西冷戦が名実ともに終結した後は、米国のジャパンバッシングの最終章といえる「脅威となった日本弱体化計画」にも加担する。「”エバ国”日本が資金調達し、”アダム”韓国に捧げる」高額献金システムが1990年代にピークとなったのはそのためで、自民党清和会はそれに加担して宗教組織・統一教会の解体を阻止し、擁護する。その活動は反共を超えて世界規模でCIAと一体化していた。文鮮明 がレーガン政権の要請を受けて中米ニカラグア親米反政府民兵組織コントラに対し資金援助したのはその一例だ。

日本の自民党、とりわけ清和会にとって統一教会は逆らえない存在だった。岸信介の盟友笹川良一の「私は文鮮明氏の犬だ」との発言はそれを象徴している。発言は笹川らが資金的にも統一教会に援助されていることを示唆した。

1974年に来日した文鮮明を自民党岸派=清和会は東京のホテルで1千人を超える参加者を得て歓迎パーティを開いた。岸の後継者・福田赳夫は「アジアに偉大な宗教指導者現れる」と絶賛し文と抱擁した=写真=。これも統一教会が米権力中枢、CIAをバックにしているがゆえに、岸、福田はそれに畏怖して受け入れざるを得なかったのだ。同様、この時分、天皇家の1つが、渋々にせよ文鮮明と会食し、「文鮮明の神格化」に協力したとしても何ら不自然ではない。