英国、対中冷戦で大幅軍拡へ 米英・日の軍事連携進む

「欧州連合(EU)離脱を機に再びグローバルパワーを目指す」と公言した英保守党政権が大幅な軍備拡大へと動いている。宇宙空間やサイバー空間、AI、ドローンといった分野に力を注ぎ、国防費を4年間で日本円で2兆円以上増額し、欧州最大の年間約460億ポンド(約6・5兆円)規模へと引き上げる計画だ。これは過去30年間最大の外交・国防政策見直しの第一段階とされており、国防支出は冷戦終結後、最大となる。

注目されるのは米国防総省傘下の軍事ネットメディア「globalsecurity」が11月19日のトップニュースとして「英国が冷戦終結以来、最大の軍拡」と報じたことだ。国防当局のみならず、米英両政府は一体となり、中国をにらんだ新冷戦を主導する意思を見せつけた。

さらに日英同盟の復活を象徴するかのように、本格運用が始まる空母クイーン・エリザベスを初の任務先として近く東アジア・太平洋地域に派遣し、日米両軍に加わって3か国の共同訓練が実施される予定という。

【写真】来年初にも西太平洋、日本近海で米英両軍と自衛隊との合同演習に参加する空母クイーン・エリザベス。地中海、中東、インド洋を経由してまずは南シナ海入りし、米艦船とともに中国が建設した軍事用人工島の12カイリ内海域での航行の自由作戦(FON)への参加も見込まれる。

 

 

■「撤退の時代」に終止符

英メディアの報道によると、ジョンソン首相は11月19日に議会で「現在の国際情勢は冷戦終結後最も危険で激しい競争に晒されており、英国は同盟国と一緒に立ち向かわなければならない」「撤退の時代は終わった」と発言。国防費増額について「コロナ禍のパンデミック下で様々な需要があるが、軍拡を断行するのは国土と英国民の安全の防衛が最優先されるべきだから」と語った。

また英海軍はアジア太平洋地域でのプレゼンスの向上を目指しフリゲート艦を13隻増やす。宇宙空間については、中国やロシアが人工衛星攻撃能力を高めているとして、通信衛星の防衛などを課題として挙げて、伝統的な仮想敵ロシアだけでなく、中国に対する封じ込めの意欲を全面に打ち出した。

野党・労働党も「軍の予算を削ってきたのは過去10年の保守党政権だ」と批判しつつ、国防費増額自体については歓迎した。

■ポスト・トランプのアジア政策

英国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国では米国に次ぐ国防費を計上しており、トランプ政権が国防費増額を求めてきたドイツ、フランスなどNATO主要加盟国、そして日本などにこれに続くよう促す形となった。

英国は米国の政権交代・ポストトランプを睨んで今回の国防費の追加計上を発表したようだ。

ウォレス英国防相は国防予算の追加投資について「米国が下す安全保障上の決定から独立するための軍事力を確保する必要がある」と述べ、トランプ米政権がこのほど発表したアフガニスタン4,500人やイラク駐留の3,000人の兵力削減を批判している。

米英の保守本流は「米軍の兵力削減に伴いアフガニスタン政府に対するタリバンの攻撃が増加し、兵力を削減してタリバンに間違ったメッセージを送れば米英主導のNATOが約20年もの時間と多額のコストを負担して構築したアフガニスタン情勢改善の努力が無駄となる」との見解で一致している。

米ネオコンを核とする米英のメインストリームは党派を超えて陰で深く繋がっているのは疑いの余地がない。

太字強調は筆者)