麻生太郎が自民党副総裁となった理由 台湾有事を扇動できる暴言王へ

岸田政権の発足とともに麻生太郎が政権ナンバー2の副総理から政権与党ナンバー2の副総裁に転身した理由が分かった。「台湾有事は日本有事」「ともに戦う覚悟を」と運命共同体意識をアピールし、2024年1月にも行われる台湾総統選挙で中国との対決姿勢を崩さない蔡英文総統率いる与党・民進党を激励するためだった今後とも日本政府の代表者ではなく、一政党の幹部としての発言として居直り、中国脅威、台湾有事=日本有事を扇動し続け、日本政府の大軍拡を正当化することになる麻生は3日間の台湾訪問を終えて9日帰国したが、今回訪問の暴言により「日本の政権与党自民党が米軍産複合体の代理組織」であることが露骨に示された。

本ブログは2022年9月掲載「「安倍国葬」指示した麻生太郎の権力の源 保守本流の祖吉田茂の血統と人脈 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」で「総理(首相)・総裁と異なり世論の批判の矢面に立たずに済む副総理・副総裁という鵺的な地位を設けさせて、ワシントンは麻生を通じて日本の政治をハンドルしているー。こうみれば麻生は戦前から曾祖父牧野伸顕ら宮中グループが培ってきた米権力中枢であるロックフェラーやモルガンといったウオール街・巨大金融資本と太いパイプを持つ、彼らの代理人」と書いた。

加えて、「副総理から副総裁に:不思議な人事」との小見出しの下、「第二次安倍政権の7年8カ月と後継の菅義偉政権(2020-2021)の1年1カ月の約9年間一貫して副総理兼財務大臣の地位にあり、岸田文雄現政権(2021-)では自民党副総裁に就任、後継の財務相には義弟(妻の弟)の鈴木俊一を据えた。この10年間、総理・総裁に寄り添うもう1人の実質最高権力者であり続けている。麻生が後任者のいない副総理を辞し、前任者のいない副総裁ポストについても、日本の既成メディアは「この不思議な人事」に決してメスを入れようとしない。」と日本の政治報道を批判した。

麻生は台湾訪問の目玉、国際フォーラムでの講演で台湾有事に言及した。台湾、日本、米国が中国の台湾侵攻という有事に際してはともに「戦う覚悟が必要」と語った。ただし、あたりまえのことだが「最も大事なことはそれが抑止力となり、台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないこと」が前提とした。いずれにせよ、挑発的な暴言の極みであることに変わりない。

ところが、松野博一官房長官は8月9日の定例記者会見で、麻生太郎副総裁が訪問先の台湾で「日本、台湾、米国をはじめとした有志国には戦う覚悟が求められている」と発言したことについて「議員・政党の活動に政府としてコメントすることは差し控える」と述べるにとどめた。つまり、自民党が政権与党であろうが、政府とは一線を画す一政党その一議員副総裁)の発言なので「台湾をめぐる問題は対話により平和的に解決されることを期待する、との立場を打ち出してきた日政府は関与しない」と詭弁を弄したのだ。平河町(自民党本部)の「主」麻生と首相官邸の「番頭」松野はあらかじめ打ち合わせていた。官邸詰記者たちはいつものように忖度し、これを追及しなかった。これで麻生が副総理から副総裁へと転身した理由が判明した。

83歳になる長老麻生に政界引退の気配はない。かつて中曽根康弘や宮澤喜一ら首相経験者を強制的に政界引退へと追い込んだ自民党の70歳代議員定年制はなし崩しにされた。ウオール街、軍産複合体にとって最も毛並みの良い「日本のメッセンジャーボーイ」に元気な間はおそらく引退の2文字はないだろう。ゴルゴ13気取りのまるでピエロのような五輪射撃競技出場経験者はどんな暴言を吐いても引退に追い込まれることはない。これも対米従属の歪んだ露呈と言える。