7日、トランプは近く「地球を揺るがす」重大発表をすると予告した。本ブログは3月14日掲載記事「5月9日戦勝記念日に米中露首脳結集も」でトランプ米大統領がモスクワ赤の広場に登場する可能性はあるとした。5月6日現在、ホワイトハウスから伝えられるトランプの発言は5月9日式典参加には否定的である。歴代米大統領が全面敵対してきたかつての共産主義総本山に乗り込むことは旧来の常識では起こりえないことだ。しかし、欧州大陸が直面する最大の脅威はロシアや中国ではなく「欧州内部」にあると欧州の現状を旧態依然とみて痛烈に批判したバンス米副大統領の2月ミュンヘン演説は欧州との決別の示唆であり、トランプは欧州を無視してロシアとの直接対話を進めてきた。トランプは5月半ばのサウジなど中東3か国の「歴訪後すぐに」プーチンと会うと語った。ならば予定を変更し「中東歴訪前」のモスクワ訪問もあり得る。プーチンは2月10日の電話会談でトランプを招待している。
トランプ政権は、その外交の優先順位をウクライナ和平より中東和平に置いているという見方がある。イラン核問題を考えたとき、国際社会におけるイランの後ろ盾であるプーチン・ロシアが必要だから抱き込もうとしているというのである。「プーチン政権は、中東でアメリカと協力する代わりにウクライナ問題で少しでも都合の良い条件を求めている」という。確かにトランプはウィトコフ中東担当特使をモスクワに送り込んでいる。だが、この見方は、あまりに実利優先で軽薄である。
上の記事で「『現代世界を蝕む、ディープステート(DS)あるいはグローバリストと呼ばれる米英権力中枢を解体するー』。これが米露両首脳の共通目標・絆ではないのか。」と書いた。極々簡潔に言えば、第一次大戦後のウィルソン米政権による国際連盟創設以来のグローバリズムの潮流は第二次大戦後に米国主導で全世界へと浸透した。自由貿易の名の下、米欧日の多国籍資本は世界の果てまで低賃金を求めて進出、サプライチェーンを複雑化した。米国中心に金融資本が跳梁跋扈し、人々はマネーゲームにうつつを抜かし、製造業は空洞化、社会格差が著しく広がった。トランプ、プーチンは米国一極支配の現体制をアンシャンレジームとみなし、レジュームを仕切る米英権力中枢を解体する体制刷新を目指している。彼らはディールを超えた理念を共有しているように思える。
5月9日の対ナチ戦勝記念日には欧州連合(EU)加盟国からはスロバキア、それにEU加盟交渉中のセルビアの首脳が参加する予定。ウクライナへの軍事支援強化に反対した親露姿勢で知られるハンガリーのオルバン首相の動向は不明。同首相はハンガリーがEU議長国となった昨年7月ウクライナの頭越しにロシアを訪問。ウクライナはこれに猛反発し、EU内でもハンガリー非難の声が高まった。
スロバキアのフィツォ首相とセルビアのヴチッチ大統領が戦勝パレードに出席すると発表すると、大きな波紋が起きた。カラスEU外交安全保障上級代表(エストニア元首相)=写真=は出席しないよう強く求めた。これに反発したスロバキア首相はカラスを「無礼者」と呼んだという。ハンガリー、スロバキア、セルビア首脳に共通しているのは現在のウクライナのゼレンスキー体制をネオナチ支配とみており、ウクライナ戦争の本質はネオナチを動かす体制の打破にあるとみなす点だ。明言はしないが、トランプ政権も同様と思える。
【写真説明】ミュンヘン安全保障会議に出席したEU外相格のカラス外交安全保障上級代表はバンス米副大統領の演説を「欧州にけんかを売るもの」と反発した。写真は議場でのカラス代表。
そのゼレンスキーが中国の習近平主席をはじめ「戦勝記念日」に参加する数多の首脳らに「参加は危険だから中止するよう」呼びかけた。ロシア当局が自作自演の爆破テロ事件を起こすからというのが理由。一方で、ウクライナメディアは「モスクワへのミサイル攻撃もある」と伝える。実際、モスクワからの報道によると、ロシア国防軍は6日以降、ウクライナと国境を接するロシア南西部などで、ウクライナ軍のドローン(無人機)約200機を撃墜したと発表。一部はモスクワ周辺に達し、首都の空港は一時閉鎖された。ロシアへのドローン攻撃は断続的に続いており、9日の戦勝80年式典を前に激化している。
もしトランプが参加すれば攻撃の背後にいるネオナチも英諜報機関もおいそれと手出しできまい。トランプは7日、近く「地球を揺るがす」重大発表をすると予告した。
参考記事:
プーチン政権崩壊狙うブレジンスキー構想 ウクライナ危機と米のユーラシア制覇
「米国も中露に追い詰められている」 ウクライナ危機もう一つの視点
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