「どうすれば日本にましな政権ができるのかを語れ」 天木直人氏の叱正を受けて

「さらば外務省」の著者で反骨の外交官として一世を風靡した天木直人氏が同氏のメルマガで直近の拙稿「安倍晋三去りて1年:お役御免の旧安倍・保守勢力、米国へむき出しの攻撃開始」について「加治康男氏が喝破した米国の安倍つぶしと、その後の日本を語れない限界」と題して言及してくれた。小生の主張は好意的に評価してくれたが、「どうすれば日本にとって好ましい政権ができるのか。そのことについて一切語らない。そのことについて語らない限り、岸田長期政権やむなしという事になる」と正された。ごく簡単に言い訳を記しておく。

6月18日付天木氏メルマガは「朝日、読売2大紙が時を同じくしてあれほど大きな力を持っていた安倍首相と最大派閥が、安倍首相の死とともに、いとも簡単に崩壊していく様を書いた」「これから始まる政局において、しかも与野党の政局ではなく与党自民党内の政局において、最大派閥の安倍派が潰れていくことは、もはや避けられない」「なぜ急にこうなってしまったのか。しかし、その一番重要なところを、朝日も読売も一切書かない」と前置きして、拙稿が朝読2大紙掲載記事の「一切書かない重要部分」に言及し、既成メディアの欠を補っていると評価してもらった。

しかし、問題はその後である。

「しかし、その加治氏もまた、岸田政権でいいのか、ダメならそれに代わる政権はどうあるべきか。そして、どうすれば日本にとって好ましい政権ができるのか。そのことについて一切語らない。」とご叱正をいただいた。

以下、少々言い訳をさせてもらう。、

小生も「さらば日米同盟」であり、平和憲法を護持して、中露をはじめ非米欧諸国と軍事的に対立する必要のない自主独立の日本を志向している。もちろん、「岸田政権ノー」である。

 拙いながら本ブログは、「古代から日本人を縛る中国敵視の超克を 日中関係改善と戦前体制清算のために  | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」をはじめ繰り返し、戦後を克服するためにはまずは大東亜共栄圏という虚構を生み出した戦前体制の清算が大前提になることを強調してきた。それは同時に近代天皇制を超克しようとする格闘でもある。

しかしながら、たびたび引用したように戦後日本はジョン・F・ダレスの以下の言葉に呪われ続けている。

「占領によって改革されたとは言え、6~7年前まで熾烈な戦争をした相手の日本人を信頼できるか疑っていた。アメリカと交渉する裏で、共産主義国だが同じ黄色人種でアジア人の中華人民共和国と通じているのではないかと疑っていた。他のアジア人の国々に対して日本人がしばしば持っていた優越感と、「エリート・アングロサクソン・クラブ」のアメリカやイギリスなどの共産主義国に対抗している西側陣営に入るという憧れを満たすことを利用して、西側陣営に対する忠誠心を繋ぎ止めさせるべきだ。日本を再軍備させ、自分たち西側陣営に組み入れるということと、一方、日本人を信頼し切れないというジレンマを日米安全保障同盟、それは永続的に軍事的に日本をアメリカに従属させるというものを構築することで解決した。」(中国を封じ込め日本を操る米英の策略を見抜け 近代日本第三期考1  差替版 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)  )

まさに日米安保条約と地位協定は「ビンの蓋」であり、決して緩まぬ「敗戦の頸木」となっている。

また、「米国の日本支配に背を向け敗戦否認する政治報道 報道の自由放棄し戦後史歪曲 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」ではこう書いた。

■元総理側近の告白

2009年9月の就任以来、沖縄の負担軽減をキャッチフレーズに米軍普天間基地の辺野古移設に異を唱え、『国外か、少なくとも県外移設』を訴えた当時の民主党政権を率いた鳩山由紀夫氏。戦後史において最も良識的な政治家と思えた鳩山首相はメディアに宇宙人と揶揄された末、1年足らずで総理の座から追われた。鳩山側近として金融財政政策を支えた元衆議院議員はホテルオークラ本館付近から東京・赤坂の米国大使館ビルを眺め、『あれが日本の司令塔』と語った。

この司令塔は北方の国会議事堂、首相官邸、自民党本部、霞ヶ関官庁街を三角形の底辺とするとその頂点に位置する格好で日本の政治中枢ににらみを利かせている。元衆院議員は「植民地提督である駐日大使の指示を受けて、日本政府の主要な人事、政治・経済・外交政策は決まる。最も忠実なのは財務、外務、法務・検察だ」と明かした。鳩山氏は首相就任後間もなく『日本の中枢はここまでアメリカに支配されているのか』と絶句したという。」

統帥権を振りかざした皇軍と天皇大権の頭脳であった宮中が消滅した戦後日本の単独支配者は霞が関の官僚である。鳩山元首相の言葉を待つまでもなく霞が関はワシントンに取り込まれてしまっている。彼らの既得権益は軍産複合体、巨大金融資本とブレトンウッズ体制を共に守ることで維持されるため、「国民の福祉」は二の次となる。否、彼らの念頭には巨大資本と自らの既得権の擁護の言い換えである「国益擁護」以外ほとんど何もない。

一方、元号を抵抗なく使用するように、戦前体制から抜けきれない日本の人々に革命権や抵抗権の行使は限りなく遠い。さらに今日の日本は野党が小党分断され、野党同士の選挙協力も不可能になった。自民党支配に代わる受け皿が破壊されてしまっている。現状打破は極めて厳しい状況にある。(選挙権、労働基本権…民主主義かなぐり捨てる日本 米管理下の新翼賛体制 6月7日再更新 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com))

小生も「大メディアにさらば」して、孤立無援の中で本ブログを立ち上げ、明日の日本はどうあるべきかを思い、試行錯誤の日々を送っている。天木氏をはじめ、拙いレポートを読んでいただく方に今後とも変わらぬご叱正を賜りたい。

2021年から随時掲載し始めた「近代日本第三期論」や「近代日本考」は「どうすれば日本にとって好ましい政権ができるのか」に向けての模索である。以下、掲載順に列挙してみる。

中国を封じ込め日本を操る米英の策略を見抜け 近代日本第三期考1  差替版 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)

日米安保破棄と対米自立を再び争点に(その1) 近代日本第三期考2 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)

脱亜入欧の末路:米英に「同盟国の長」と煽てられ、アジアで孤立 近代日本考・補 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)

東大病の源は「変われない日本」ー刺傷事件に際して  近代日本考  | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)

選挙権、労働基本権…民主主義かなぐり捨てる日本 米管理下の新翼賛体制 6月7日再更新 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)