ブリンケン米国務長官が急遽安倍弔問、米政府の狙いは 元首相暗殺事件短評2

安倍元首相が7月8日に銃撃され死亡したのを受け、アジア外遊中のブリンケン米国務長官が元首相の弔問のため11日に急遽来日した。元々12日に訪日予定だったイエレン米財務長官も同日、葬儀の執り行われた東京・増上寺に弔問した。日本メディアが元首相を「内政、外交ともに傑出した業績を上げた稀有な政治家」「政府は吉田茂に続き国葬も検討」と一斉に過剰な賛美報道を続ける中、米国務長官は東京でこれにハーモナイズする形で「革新的な指導者、政治家で世界的な地位を持った方。米国と日本両国の関係を新たな段階に引き上げた」とのコメントを表明した。=写真 右はエマニュエル駐日大使=

これは機に乗じて、安倍氏による前例のない長期にわたる「対米貢献パフォーマンス」を自民党政権に揺るぎなく後継させるための演出ともいえる。芝増上寺での通夜、葬儀に際し、献花に訪れる人の波を映像で繰り返し流し、多数の一般弔問者がテレビカメラの前で涙をぬぐいながら口々に安倍氏を偲び讃えていた。こんな中、元首相を世界的な地位を持った方」と敬意を示すことで、日米関係の闇、すなわち戦後日本には自立的といえる国政も外交もなく基本的にワシントンの指示によって動いていることに蓋をした。人々は米国から「日米同盟」の対等性にお墨付きを得た気持ちに導かれる。

バイデン大統領は「安倍元首相を賛える尊敬の表示」としてホワイトハウスをはじめとする米政府機関に10日の日没時まで半旗を掲揚するよう指示した。これは主として日本人に向けての措置ではなかろうか。何よりも軍事面で実質NATO参入を果たし、自衛隊を世界規模で米軍を補完する精鋭部隊に仕上げた安倍氏の「傑出した対米貢献」に感謝していることをアピールした。米三大週刊誌の一つ「タイム」は最新号を安倍特集とし、安倍礼賛を極めつける。

詳しくは近日中に掲載する論考「「戦後の終焉」告げた日本のNATO「加盟」 米単独覇権と安倍晋三」で述べる。

ブリンケン国務長官は同時にエマニュエル駐日アメリカ大使をはじめ日本で活動する外交官、諜報機関などの主要メンバーとポスト安倍時代の日本ハンドルの方法について協議するとともに、日本の政財官+メディアのキーパーソンとも接触したと推察される。

 

差し当たり、2020年8月以降の安倍外交・安保政策を巡る本ブログ掲載の主要論考を列挙する。参照されたい。

①「安倍後継、ヤーヌスの顔継承へ 媒体は日本会議」

②「古代から日本を縛る中国敵視 戦前体制の清算不可欠」

③「日本を「対等同盟」と持ち上げる下心 新アーミテージ報告書 」

④「「安倍氏、英にクアッド参加促す」 操られる日本 」

⑤「「日本の右翼政権に軛かける」 新日英同盟と拡大NATO  」

⑥「保守「主流」逆転と米国の圧力 反共強国と清和会支配1 」

⑦「安倍最長政権で自衛官重用露わに 萌え出る軍人崇拝1 」