安倍暗殺事件公判準備を巡る4つの謎 永遠に交わらない事件の「真相」と山上被告の起訴事実

2022年7月に発生した安倍晋三元首相殺害事件ー。不可解の塊と言える事件の真相を本気で究明しようとするメディアは見当たらない。不可解さ、矛盾点にこだわり、事件の闇を暴こうとするジャーナリズムは陰謀論とは無縁である。本ブログは同年8月掲載記事「笑い飛ばせぬ安倍謀殺説、検証は必須 安倍は踏み台から降り身伏せた? | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」と同11月掲載記事「「安倍氏の心臓に穴」と救命医 警察これに蓋して4カ月 絶望的なメディアの沈黙 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」で殺害事件を巡る拭えない不可解さを指摘した。事件の「真相」と山上被告の起訴事実は永遠に交わりそうにない。以下、2023年6月に開始されるはずだった事件公判前準備手続きを巡る謎を列挙する。

公判前整理手続きは2005年の裁判員裁判導入とともに始まった。膨大な証拠を抱える煩雑な裁判事案の公判迅速化を目的とするとされている。山上徹也被告の起訴手続きは2023年3月末の4件の追起訴で終了し、近年は平均10か月程度かかるようになったという公判前準備手続きを経て、初公判は遅くとも2024年第一四半期までには開かれると見込まれていた。

ところが、報道によると、奈良地裁は6月12日、危険物の可能性がある不審物が地裁に届いたとして、同日午後に予定されていた安倍元首相銃撃事件の第1回公判前整理手続きの期日を取り消した。取り消された第1回期日は3か月経た9月13日現在いまだ公表されていない。メディアは「初公判は来年度以降」とオウム返し。来年度以降とは2024年4月から2025年3月までをいう。ならば初公判期日は2025年3月となる可能性もあるということだ。これは公判の迅速化の原則に反するし、初公判期日の事実上の無期限延期を意味する。第1回公判前整理手続き期日再設定の不作為。このサボタージュと言える裁判所の対応とメディアの沈黙が第一の不可解さである。

第二は、奈良県警が「6月12日午前11時15分ごろ、奈良地裁男性職員が裁判所に配達された段ボール箱を金属探知機にかけたら反応したと警察に通報してきた」と発表したことだ。奈良県警記者クラブ詰め各社は一斉に動き「奈良地裁の職員や来庁者らが建物の外に退避している様子」を映像や写真で物々しく報道した。

奈良県警によると、段ボール箱(縦約33センチ、横約28センチ、高さ約26センチ)は粘着テープで梱包。宛先は山上被告の公判前整理手続きの担当者で、送り主は東京都内の住所だったという。通報を受け、県警の爆発物処理班が回収。中身は大量の書類。それは山上被告の減刑を求める署名であり、危険物や爆発物の入る余地はなかった。

まさに不可解極まる。第一、大量の書類しか入っていない段ボール箱が金属探知機に反応するはずがない。百歩譲って本当に反応したのなら、段ボール箱に書類のほかどんな金属類が入ってたのかを警察は公表すべきで、報道各社はこれを問い質すべきだった。さらに「送り主は東京都内の住所だった」というが、裁判所や警察は段ボール箱を開ける前に送り主に連絡をとったのか。荷物に貼られた送り主の名前や住所、連絡電話番号が不実記載であって初めて不審物となるからだ。この「不審物」事件は裁判所と警察とが連携したサル芝居ではないかと疑いたくなるほど稚拙なシナリオだ。

さらに報道は被告人に出席する権利がある公判前準備手続きに山上被告を欠席させようと動いた。これが3番目の謎だ。弁護士である山上被告の伯父は「被告人の出席は無意味。手続きの混乱要因となる」と同被告を説得。「刑事訴訟手続きを勉強していた山上被告は『出席しなくても構わない』と弁護人に語っている」と報じられた。果たして真実なのか。山上被告の意見を封じ、検察、裁判所のシナリオ通りにことを運ぶためではないのか。

実際、「三大刑事弁護人」の一人といわれる高野隆弁護士は4月に東京・霞が関の弁護士会館で開かれた「先端的弁護による冤罪防止プロジェクト」発足記念シンポジウム公判前整理手続きを「クソ」と断じ、「裁判官のやりやすいように弁護士が餌食にされている。もっと警察や裁判官、検事と戦ってほしい」と若手弁護士に訴えたという。高野氏は「本来の目的が迅速化と充実化だった裁判員裁判の公判前手続きは、そうはなっていない。裁判官が判決文が書ける状態にもっていくだけの役人の利益最優先だ。クソな仕組みを延々と維持してはいけない」と呼び掛けている。

安倍暗殺事件の「真相」理解は山上被告の起訴事実だけでは到底不可能で、両者は永遠に平行線を辿り交わることがなさそうなこと。これが4番目の最大の謎だ。その詳細は上記の「「「安倍氏の心臓に穴」と救命医 警察これに蓋して4カ月 絶望的なメディアの沈黙 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」をはじめ2023年6月掲載の「米ネオコンが安倍に激怒した理由 元首相暗殺事件再考1 | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」を嚆矢とする元首相暗殺事件再考1-3で論じた。

警察、検察と裁判所がタッグを組み、それにメディアが加担して山上被告と弁護人の主張をできるだけ矮小化しようと動いている。事件の衝撃と山上被告の影は年月の推移とともに薄まる。この思惑が不可解な公判準備手続きの無期限遅延を招いていると推測せざるを得ない。2022年12月末掲載記事「安倍暗殺事件公判の始まる2023年 戦後政治の暗部を炙る | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)」にはこう書いた。

「安倍暗殺事件は公判を通じて戦後史、とりわけ日米韓関係の暗部、すなわち日本の近代天皇制が米韓工作機関により文鮮明の主宰するカルト教・統一教会のモデルにされたという巨大な闇に触れかねない。それを避けるための徹底した準備が司法、行政一体となり行われていると疑わざるを得ない。検察、裁判所をはじめ日本の関係当局は全力を挙げて山上公判を統一教会とその広告塔・安倍晋三に対する私怨問題に矮小化し、1955年自民党結党以降のCIA、自民党、統一教会、岸信介、安倍親子、さらには天皇家の絡んだ戦後史最大の暗部に蓋をしてくるのは必至。」