岸田首相と麻生副総裁の「決別」は茶番  米国の日本支配構造に眼を

岸田首相が1月18日夜「岸田派解散」を表明したのを受け、麻生太郎自民党副総裁が「寝耳に水」と激怒。麻生、茂木敏光同党幹事長を頼りとする岸田政権の「トロイカ政治」が終わったと報道された。だがそれからまもなく一月近く。岸田降ろしは起きず、政権が揺らぐ気配はまったくない。自民党は安倍派解体劇となった政治資金パーティー裏金事件を受けて政治刷新本部を設置した。最高顧問に任命された麻生は1月11日の初会合には欠席、ワシントン、ニューヨークで日本の政局安定と岸田政権継続に向け米側要人と話し合っていた。「岸田派解散」表明は麻生が1月13日に帰国して5日後に行われた。「解散」表明までに岸田と麻生には訪米の成果を軸に十分に話し合う時間があった。なのに「岸田派解散」は麻生にとって寝耳に水で、麻生・茂木に対する「決別宣言」となったというセンセーショナルな報道が目立った。なぜか決別騒動は茶番劇では」との声は上がらない。

本ブログは一貫して麻生太郎を米権力中枢、ネオコン、ジャパンハンドラーの代理人とみてきた。差し当たり、直近の以下3つの論考を参照願いたい。

「安倍国葬」指示した麻生太郎の権力の源 保守本流の祖吉田茂の血統と人脈 ②米は"レイムダック"岸田首相を延命へ 安倍派解体、反米右派排除が最優先 ③対米協調派末裔の麻生太郎はなぜオークラの常客なのか 米国大使館と繋がるホテル 

日本の政治、政局があたかも自立して動いているかの如く日本のメディアは報じる。実際は米国が仕切っている。複数の元衆院議員は「日本の政治は駐日アメリカ大使の采配で決まる」と明言している。可視化されることはほとんどないが、降伏文書に署名した1945年9月2日以来、米国の対日占領は続いている。主流メディアは時折識者にこれを「対米従属」と語らせ、お茶を濁してきた。

麻生太郎は「台湾有事は日本極東有事。戦う覚悟を持て」と煽る反中国のタカ派。2000年代の外相、首相時代に不安定の弧アフリカバルカン半島から中東を経由、東南アジア朝鮮半島に至る帯状の紛争多発地域を指す)、自由と繁栄の弧(北欧諸国からバルト諸国東欧中央アジアコーカサス、中東、インド亜大陸、東南アジアを通って北東アジアにつながる地域)、そして普遍的価値に基づく価値観外交といった米世界戦略の基礎となった英地政学やネオコンの始祖アーヴィング・クリストルの言葉を繰り返し用いた。要するに中国とロシアを封じ込めユーラシアの中核地帯(Heartland)を制覇することが米国の世界戦略の要であり、対日政策の核心は周縁地帯(Rimland)にある日本をそのコマとしていかに有効に利用するかにある。W・ブッシュ米政権期(2001-2009)に外相、首相を務めた麻生はブッシュ政権を牛耳り、米国の単独覇権を唱え、力の行使を実行したネオコンと一体の関係となったようだ。

バイデン政権もネオコンが支配している。米国に事実上占領されたままの日本の自民党政権は米国に決して逆らえない。安倍暗殺に続く政治資金パーティ収支裏金事件の騒ぎの中で安倍派議員が抵抗することなくあまりにやすやすと派閥解体を受け入れたのはネオコン、そして代理人の麻生に恐怖しているからであろう。ではなぜ麻生は自派閥を解散しなかったのか。麻生派を脱会したのは岸田の大学時代からの40年来の親友岩屋毅元防衛相だけだ。改憲を主張し岩盤保守層にも支持される麻生ならさまよえる元安倍派議員たちは寄り付きやすい。派閥存続へと動く茂木派も櫛の歯が抜けるように有力議員が脱会しており、崩壊は時間の問題と思われる。彼らの行き先の一つが麻生派となる。「いま派閥拡大をはかるのは、センスがない」との声もあるが、時期が来るまで表に出ず、裏口にとどまらせればよい。

麻生主導とはいえ安倍派を解体した岸田は、右派派閥結成に動く高市早苗らのグループを排除できれば、党運営は格段に容易になった。麻生が岸田に「派閥解散表明は寝耳に水」と抗議したふりをしたのは米要人と作成した「岸田政権継続シナリオ」の1つではなかろうか。各種調査をみると、暴言王麻生は多くの国民からもそっぽを向かれ最も嫌われている政治家である。「長い間いいように操られてきた目の上のたんこぶで老害となっている麻生太郎の切り捨てを決断した」と岸田を喝采するストーリーをネットメディアは盛んに掲載し始めた。これによって確実に内閣支持率は一定程度上がる。さらに3月中旬にヤマを迎える今春闘での実質賃上げ達成をPRし、4月の国賓待遇訪米、衆議院補欠選を乗り切り、6月には定額減税・給付金をばらまき、さらにサプライズの日朝首脳会談などで支持率が目に見えて向上すれば、9月の総裁選前に解散総選挙を実施、勝利を得て総裁再選を狙うことになる。

1月8日付日経新聞電子版は「自民党の麻生太郎副総裁は9〜13日の日程で米国を訪問する。…滞在中に政府要人や与野党の議員らとの面会も予定する。日米両政府は2024年春に岸田文雄首相の国賓待遇での訪米を調整している。米国側には政治資金問題を抱える岸田政権に不信感もある。麻生氏はこうした不安の払拭と首相訪米への地ならしを急ぐ。」と報じている。ポイントは「政府要人らと面会」して「岸田政権への不安を払拭する」である。日経が伝える「米側の岸田政権への不信感・不安を払拭する」とは2023年1月のワシントンでの日米首脳会談で打ち出された「日米同盟の現代化:安保協力の重層化」を具体化する形で日本をウクライナ復興支援、台湾有事態勢、中国、ロシア、北朝鮮封じ込めの先頭に立たせるための自民党政権の安定化であり、岸田政権の継続と読める。

麻生の1月訪米は「米シンクタンクの招待」とされた。具体的には対日司令塔でジャパン・ハンドラーの巣窟とされるワシントンDCの戦略国際問題研究所CSIS)である。現地からの情報によると、麻生は、ワシントンでバイデン政権発足で復活したジャパン・ハンドラーの筆頭格カート・キャンベル国務副長官(米国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官)をはじめウィリアム・ハガティ上院議員(共和党・元駐日米大使)、共和党系ロビイストのロイ・ファウチ氏らと会談。訪米の主目的である「岸田政権維持」のプラン作りに絡んでは表に名を出せない人物がかなりいたはずである。ニューヨークでは「影の政府」筆頭ジョン・ロックフェラー4世と同5世親子と懇談した。このロックフェラーコネクションこそ戦前の対英米協調派の末裔で、牧野伸顕、吉田茂の血脈を継ぐ麻生の権力の源泉である。

岸田は麻生との決別を最も恐れている。

 

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「麻生太郎がトランプにアプローチ」は眉唾 トランプ娘婿がロックフェラー介し接近か | Press Activity 1995~ Yasuo Kaji(加治康男) (yasuoy.com)