中国のコロナ禍を予告した米国主導の巨大勢力 中露排除し世界秩序刷新図る

米調査会社「ユーラシア・グループ」は今年初に世界経済最大のリスクは中国の進めるゼロコロナ政策が失敗することだと予測。「今年の10大リスク」の筆頭に挙げた。この予測を巡る問題については2022年1月8日掲載記事「中国よ! 今度こそコロナ蔓延で苦しめ 米社予測は暗示する」で論じた。中国では一日当たりの感染者数が日本を下回る2万人にも達していないのに、中国政府はコロナゼロ」を掲げコロナ完全封じ込めを目指す。結果、米社の予測通り経済中枢の上海までが完全な都市封鎖(ロックダウン)に追い込まれた。中国に投資した企業の中には操業停止に追い込まれたものも少なくなく、半導体不足をはじめサプライチェーンは途絶されて世界経済は混乱へと進んでいる。米社の予測は予告ではなかったのか。その背後にある巨大な勢力の何らかの関与が疑われてならない。

調査会社を自称する米国の「ユーラシア・グループ」の背後を探るとその1つにクラウス・シュワブの世界経済フォーラム(WEF)に遭遇する。WEFはダボス会議を主宰することで名高い。何よりも、シュワブは「ポストコロナに向けて資本主義をグレートリセット(大刷新)すべし」と唱えている。そのまた後ろに米英両政府の外交政策を実質取り仕切る米外交問題評議会(CFR: Council on Foreign Relations)と英王立国際問題研究所(Chatham House)の影がちらつく。

上記米社は2017年から日本で「Gゼロサミット」を毎年開催しているGゼロとは同社CEOで政治学者のイアン・ブレマーが2011年に提示した言葉で、G7を構成する主要先進国が指導力を失い、G20も機能しなくなった国際社会を表す。ブレマーCEOの力を誇示するように唯一日本に首相、経済産業相ら主要閣僚のほか日本経団連会長、経済同友会代表幹事ら日本の政財界トップを全員参加させている。

2021年12月8日。「新しい資本主義」を看板に登場した岸田文雄首相が動画で米国に向けて今、資本主義は、更なる進化を求められています」と挨拶した。(GZEROサミット2021における岸田内閣総理大臣挨拶https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2021/1208gzero.html)=写真=

岸田首相は「世界は米中関係を始め、地政学的緊張が高まる局面にあり、Dr.ブレマーが指摘するGゼロの度合いが強まっています。この緊張のひとつの本質は、経済社会そのものバージョンアップの立ち遅れにあります。」と呼び掛け、資本主義刷新を装った世界体制の転換に協調する姿勢を示した。裏読みすれば、岸田内閣の看板政策がどこから出て来たかを示唆した。

Gゼロサミットとは第二次大戦後の国連形成に伴う国際秩序の刷新、換言すれば中国・ロシアの現行政治体制を転換し米国と同盟国を核とした新たな国際秩序の構築を目指すものだ。それは2020年Gゼロサミットでの次のイアン・ブレマーの挨拶にはっきり示された。

「世界には、米国と中国という二の勃興するテクノロジー超大国が存在する。これをT―2と呼ぶ。…今のところ、T―2競争では中国が「勝っている」。…世界経済のデジタル化は、国家安全保障を通常戦力及び核戦力から、サイバー・情報戦争能力へと再定義している。Gゼロから抜け出す道を見いだそうとするのであれば、米国の関与再開をはるかに超えたものが必要になる。新しい国際的なアーキテクチャー(枠組み)を生み出し、全ての主要民主主義国の間の妥協、協力、調整を必要とする。」(斜線強調は筆者)

こんな中、極右反共組織・国際勝共連合と繋がり、米ネオコンの立場を代弁する論調で知られる世界日報が4月9日、「(米調査会社・ユーラシア・グループの中国でコロナが蔓延するとの)懸念は的中しつつある」との記事を掲載した。それはウクライナに侵攻したロシアと中国に共通する政治体制を弱点とみてこれへの攻撃を予告する内容となっている。

「中国最大の商都上海市はこれまで感染対策の優等生とされてきたが…5日にはロックダウン延長が決定、対象を市民2500万人すべてに拡大した。国際社会は新型ウイルスとの共存を探ってきたが、唯一中国だけは感染を徹底的に抑え込むゼロコロナ政策を取ってきた。…中国政府はそれを「政治体制の勝利」として高らかに謳い上げることで中華ナショナリズム高揚の旗を振り、強権国家を正当化した。…本来、科学的に取り組むべき感染症対策を「政治体制の優劣」と結び付けて論じてしまったことで、中国当局は「引くに引けなく」なってしまっている。コロナ対策での失敗は、即、政治体制の優位性の否定を意味してしまうからだ。ロシアのウクライナ侵略の失敗は、強引なチェチェン侵攻とクリミアでの力による無血占領を果たした“成功”体験が、二度あることは三度あると安易に思い込んだ結果でもあった。…ロシアや中国という強権国家は、基本的にマスコミのチェックを受けることがなく、独善に陥りやすい「体制の弱さ」が露呈する。」(斜線強調は筆者)

この記事から明らかなように中国でのコロナ禍と「コロナゼロ」政策を逆手に取り、中国市場を西側市場からのデカップリング(分断)を進めると同時に、ウクライナ危機に乗じてロシアの排除を進める勢力がいる。

【写真】世界日報と一体の統一教会・勝共連合が開催した2020年ワールドサミット

日本の政財界トップを動かせる「ユーラシア・グループ」の背後にいる勢力と国際勝共連合と繋がる勢力とが無縁であるとは到底思えない。

安倍元首相率いる自民党最大派閥「清和会」や派閥の源流となった岸信介、福田赳夫両元首相率いた先行派閥が国際勝共連合と繋がってきたことはよく知られている。清和会及びこれを囲む日本の政財界人脈が上記の「ユーラシア・グループ」の背後にいる米英人脈とも深く繋がっているのは疑いのないところだ。