トランプ米大統領が就任前の昨年12月15日、フロリダの私邸「マール・ア・ラーゴ」で故安倍元首相の昭恵夫人と非公式の夕食会を開いてからほぼ半年。今度はロシアのプーチン大統領が昭恵夫人をクレムリンに招き、懇談した。バイデン政権下で勃発したウクライナ戦争に伴う対ロシア制裁に忠実に追随し、ロシアへの渡航禁止を告げてきた日本政府が安倍未亡人のクレムリン訪問を黙認したことは日露関係雪解けの兆しを示唆する。
トランプが大統領に返り咲いて以来、4か月間で少なくともプーチンと公式には3度電話会談を行っている。発表によると、いずれも1回につき2時間半も話し込んでいる。気心の知れた両首脳の間には非公式な機密のやりとりも何度もあった推察されている。長時間に及んだ議論の中で、両者がともに親密な関係を結んだ安倍晋三元首相の殺害の背景について意見交換しなかったはずがない。ロシアの諜報機関は安倍殺害に絡む深い情報を収集しているはず。
同夫人は面談後「主人が27回の首脳会談を通して築いた信頼関係を無駄にしたくない」とXしたが、半年前に同じことをトランプに語ったはずだ。意を酌んだトランプの声を耳にして、プーチンは昭恵夫人招待へと動いたのではないか。
またこのワシントンの意向があってこそ石破政権は昭恵訪露を黙認できたはずである。それを示すかのように、12月のトランプ夫妻との面談・会食に同行した薗浦健太郎元衆院議員が、5月のプーチン大統領との面談にも寄り添った。同元議員は安倍元首相側近で麻生元首相の秘書も務めていた。
プーチン大統領が5月29日にトランプ夫妻に昨年末手厚くもてなされた昭恵夫人をクレムリンに招いたのは、トランプが一転してプーチンを批判した直後だった。
米報道によると、トランプは5月25日、「プーチン氏とは長いつきあいで、いつもうまくやってきた。だが、彼は(ウクライナの)街にロケット弾を撃ち込み、人々を殺している。まったく気に食わない」と語った。さらに自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、プーチン氏は「完全に狂ってしまった」と投稿している。
激越なプーチン批判は昭恵訪露を知っていたトランプの意図的なものとも受け取れる。プーチンは苦笑いしたはず。実際、対ロシア制裁の強化を検討しているのかと問われたトランプは「もちろんだ」と答えながらも制裁強化に踏み切ったり、ましてやウクライナ和平仲介を打ち切る気配はない。
昭恵夫人はプーチンの眼前で「ロシアは日本にとって重要な隣国であり、この困難な時期でも両国間の接触が重要である」と明言。するとプーチンは「安倍氏は日露平和条約締結に尽力した」と評価。日米安保条約が北方領土返還を妨げていることには言及は避けたが、トランプ政権による米露融和がダレスの呪いを解消できるとの期待も滲んだ。注
トランプの了解の下で行ったと思われる昭恵夫人招待は、プーチン政権が日本政府に対し送った「日本は米ネオコンや古い欧州(DS)の鉄鎖を断ち切り、米露融和の輪に参加せよ」とのシグナルではないのか。
選挙で選ばれることのない政策決定機関であるEU委員会をはじめ欧州連合(EU)の官僚人脈は旧い欧州の貴族階級に支配されている。ソ連崩壊で旧ポーランド貴族はウクライナ西部での大土地所有を回復した。だからポーランドは英仏とともにゼレンスキー支援に執着している。
EU委員会の委員長をホンデアライエン(von der Leyen)が務めているのは彼女の夫がドイツの名門貴族の出であるからだ。ドイツ語の von (Hapsburg),フランス語の de (Gaulle),イタリア語の da (Vinci) はみな出自を表す前置詞で家柄を表す。ドイツ語圏で苗字の前に vonがつけられているのはかつて貴族に格上げされた経緯があり、いまだに特別なステータスを固持する。
ディープステート(DS)の一角で「影の世界政府」と呼ばれる年次会合ビルダースバーク会議は欧米を中心に、政治家、官僚、多国籍企業・金融機関、財団代表に加え欧州の王族、貴族など130-150人が出席する。
プーチン、トランプは米欧DSが進める露プーチン体制破壊・ユーラシア制覇と闘っているのであり、現代のアンシャンレジュームとの闘争とみるべきだ。プーチンの提起する「紛争の根本原因の除去」とはこの欧米旧勢力の打倒であり、少なくともその傀儡ウクライナ・ゼレンスキーによるネオナチ体制の除去が必須となる。それをトランプ政権は理解している。
トランプとプーチンとの間に亀裂が入ったと喜ぶ米欧DSに「どっこい仲良しだよ」との信号を送ったのが「非友好国日本からの昭恵夫人クレムリン招待」と見たい。
注
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