本ブログは内閣総理大臣を筆頭に日本政府の主要人事が米国の采配で決まり、タカ派清和会の安倍政権から「ハト派」宏池会の岸田政権へと潮目が変わったのは日本の保守政治が吉田茂を源流とする保守本流・宏池会へと回帰しているとの見立てを示してきた。9月末に実施される自民党総裁選はその試金石となる。
岸田首相が8月14日に9月の総裁選不出馬を表明すると、間もなくTBSが独自ダネとして「アメリカ政府関係者はJNNの取材に対し、総理側近から先週金曜の段階で“岸田総理が総裁選に立候補しない可能性がある”という見通しを聞いていたと明らかにしました」と伝えた。先週金曜とは8月9日。したがって、岸田首相は誰よりも早く続投を促されてきたアメリカ政府関係者に不出馬の意向を告げたことになる。この時点では側近の木原誠二らを除き日本側は誰も岸田の不出馬決意を知らなかったのだから、裏返せばいかに米政府が自民党総裁選に干渉してきたかを示唆するものだ。
そもそも米政府が日本政府の人事にいかに介入してきたかには一貫して目を閉ざしてきた日本のメディアだけに、TBSの報道にはサプライズ感はあった。だが米政府関係者は「不出馬の表明がこれだけ早いタイミングだったことに驚いた」と語っているが、この報道には岸田がなぜ真っ先に米政府に不出馬の意向を伝えようとしたかを掘り下げる姿勢はない。米政府関係者とは「植民地総督」エマニュエル駐日アメリカ大使以外考えられないが、「また、エマニュエル駐日大使は不出馬表明を受けて、SNSで『岸田総理の揺るぎないリーダーシップの下、日米両国は同盟関係の新時代を切り開いてきました』とコメントした」と伝え、エマニュエルとは別人物であるかの如く装った。
安倍派(清和会)の興隆については、不十分ながら「森辞任が映す「変わらぬ日本」 逆コースと清和会 差替」、「保守「主流」逆転と米国の圧力 反共強国と清和会支配1」、「バブル崩壊と伴に「保守本流」排除加速 反共強国と清和会支配2」などを参考にしてもらいたい。潮目の変わりは、劇的な2022年安倍暗殺事件にある。これに続く2023年から2024年にかけての派閥政治資金パーティ裏金事件で安倍派が解体。ワシントンから見れば、9月の自民党総裁選は安倍色一掃が焦点となる。自民党タカ派に漂う反米右翼として依って立つ皇国史観の残滓をできるだけ拭い去ろうとしているからだ。
候補者乱立には菅前首相に担がれた小泉進次郎の独走を許さず、票を分散して決選投票に持ち込みたい麻生太郎の意向があるとみる向きが多いが、これは無視する。裏で動く米諜報機関員は安倍に近かった者ほど✖をつけて回っているはず。ならば安倍の二卵性双生児と揶揄できる高市早苗がパージの筆頭となる。40代小林鷹之を担いだのは前回の総裁選で安倍に促されて高市を推薦、支持した議員らが中心とされる。高市は20人の推薦人確保さえ危ぶまれている。高市、小林は共倒れとなろう。
安倍晋三及び取り巻き右翼との距離。これを基準に9月末の総裁選を巡る動きを観察したい。
注:「米ネオコンが安倍に激怒した理由 元首相暗殺事件再考1 」、「ポスト岸田、米国の望む日本の保守政治とは 床屋談義報道を超えて 」なども参照されたい。